植物研究助成

植物研究助成 23-14

高収量バイオマス竹稈の非破壊探索・評価技術の開発

代表研究者 富山県立大学工学部 生物工学科 生物工学研究センター
准教授 荻田 信二郎

背景

 タケは、発生-伸長-成熟のプロセスを3-5年程度と極めて早いサイクルで達成するダイナミックな栄養繁殖様式を有している大型植物であり、セルロース系バイオマスとして有望視されている。一般に竹稈には中空が存在し、これは竹材の材積を極端に低下させる、輸送コストを増大させる、さらには竹材の力学的特性等に影響を与えることが明らかである。従って、中空の程度を把握・改良することが、タケバイオマスの効率的な利用を促進する重要な鍵であると位置づけた。

目的

 本研究の目的は、竹稈の肉厚=中空の程度を、熟練者の経験や勘、あるいは伐採調査などによらず、非破壊で探索・評価する技術を開発することである。

方法

 タケの生長過程において、超音波探傷子に加えて、新たにサーモグラフィ等の非破壊撮影などを併用して測定を行い、稈の中空-中実状態の探索データを蓄積する。一部のタケに関しては、伐採し、稈の中空の程度、含水率、組織形態観察などを行い、非破壊検査データと実測データを比較検討する。幾つかの候補竹に関しては、タケの細胞・組織培養技術を応用して、さらに詳細な解析を行うための生長モデルを構築する。

期待される成果

植物の生長様式を詳細に研究するためには、フィールドにおける調査の徹底が重要であるが、対象がタケなど大型植物である場合、非破壊検査法にて解析対象を絞り込むことは非常に有効なツールとなる。もし本課題でバイオマス高収量型のタケを探索でき、その成立要因を明らかにできれば、自然科学分野の研究発展に寄与できることはもちろんのこと、材積の増加=CO2削減効果の高いバイオマス植物を創出でき、日本の森林生態系(特にタケの多い里山生態系など)の有効活用に活路を見出すことができる。なお、タケ由来の代謝産物に着目している医農薬、タケバイオマスを加工原材料として位置づけている製材、製紙、繊維等の幅広い工業分野で、この技術開発が期待されている。