植物研究助成

植物研究助成 24-06

雌雄異株植物テンナンショウの性分化制御メカニズムの解明

代表研究者 静岡大学大学院 農学研究科
准教授 大西 利幸

背景

 雌雄異株であるサトイモ科テンナンショウは、根茎サイズが小さい時は花を咲かせず、肥大するにつれ雄花、次に雌花をつける「性転換」の特徴を有する。その珍しい生理現象から生態学的見地から関心が持たれているが、テンナンショウの性転換機構の制御メカニズムは未解明のままである。本研究はテンナンショウの性転換制御機構を分子レベル、特に植物ホルモンに注目して解明することを目的に、哺乳類の性ステロイドホルモンであるプロゲステロンがi) テンナンショウの雄蕊と雌蕊においてに有意な差があること、ii) 果実に最も多く内生していることを明らかにした。また植物ホルモンの網羅的定量分析の結果、雄蕊にはtrans-ゼアチンが、雌蕊にはインドール-3-酢酸が他の部位に比べて有意に内生した。このことは植物ホルモンが複合的にテンナンショウの性転換に関与することを示唆している。

目的

 本研究では、「雌雄異株植物テンナンショウの性分化制御メカニズムの解明」に向けて、テンナンショウにおける植物ホルモン生合成遺伝子に注目して、i)植物ホルモン生合成遺伝子の探索のため、次世代シーケンサーを用いてテンナンショウのESTデータの取得、ii)リアルタイムPCRを用いた植物ホルモンの生合成遺伝子の発現プロファイルを明らかにする。

方法

テンナンショウのトランスクリプトデータベースの構築: テンナンショウ各部位 (雄花、雌花、茎、根茎、根、果実) よりmRNA抽出を行い、次世代シーケンサーを用いてテンナンショウのトランスクリプトデータを取得する。
植物ホルモン生合成遺伝子の発現プロファイル解析: 上記2で構築したテンナンショウのトランスクリプトデータから相同性解析により植物ホルモン生合成遺伝子の塩基配列を抽出し、定量リアルタイムPCRにより、各部位における発現プロファイルを解析する。

期待される成果

 本研究は、性分化の制御作用点を見出すことに繋がり、人為的に性分化制御を可能にし、不稔による植物バイオマス生産の減少を低減する一つの糸口になると期待できる。