植物研究助成

植物研究助成 24-09

照葉樹林下の庭園における観賞果実への鳥類等の干渉に関する研究

代表研究者 神戸大学大学院 人間発達環境学研究科
准教授 大野 朋子

背景

 近年、日本の民家庭園には、園芸品種や外来種が好んで植栽されるようになり、植物を観賞するだけでなく、食用植物を植栽したり、小鳥の鳴き声を楽しむ庭も造られている。このような庭園の形成は、園芸品種や外来種の野生化や拡散の原因となり、生物多様性の劣化が懸念される。庭園植物には鳥散布型植物が多く、二次林での種子の鳥散布は種の多様性を劣化させるとされるが、鳥散布による民家庭園植物からの二次林や周辺植生への干渉はよく分かっていない。鳥類は、果実の色を認識して採食しているが、H26年度にはUV光を反射あるいは吸収する果実の種類を調査し、果実の成熟にともなって鳥類の飛来や採食が多くなる傾向を確認した。

目的

 鳥類による果実の食餌と散布と庭園植物の野生化の実際を把握するために、餌となる果実の色や形状、大きさ、成熟度、吸光の状態を技術改善しつつ計測し、植物種ごとに鳥と果実との関係を明らかにする。野生化しやすい庭園植物の果実と鳥類の視覚情報を統合し、種子散布の有無と種子拡散の度合いを明らかにして、環境に配慮した庭園植物の植栽と管理における基礎的知見を得る。

方法

鳥類の採食と果実の関係把握:研究園内および神戸市等を中心に民家庭園や公園で植栽される樹木を選び、果実の形状と色、紫外線反射吸収量を測定する。10mm以下の小さな果実の計測にはハンディ型色彩計・濃度計NR-11Bを用いる。疑似餌の使用を加えつつ、研究園内で自動撮影カメラによって採食行動を調査する。
鳥類による種子散布の実態把握:鳥類が採食している植物から種子拡散が問題となる種を抽出し、ペレットやシードトラップに含まれる種子を調査する。
成果の公表:これまでの情報を統合して果実の色と鳥類の採食との関係、種子散布の実態を明らかにし、論文を作成して公表する。

期待される成果

 鳥類による果実の嗜好性が定量的に明らかになり種子拡散の詳細が判明するので、適切な樹種を計画的に植栽し外来種の拡散や野生化への対策を策定できる。また、庭園や緑地への鳥類の誘因や忌避などに応じた植栽デザインや管理計画が可能となり、造園学、緑化工学、資源保全学などの領域で活用できる。