植物研究助成

植物研究助成 26-11

多回起源ハコネシケチシダの種確立過程の解明

代表研究者 香川大学 教育学部 理科領域
准教授 篠原 渉

背景

  シケチシダ属のハコネシケチシダはイッポンワラビとシケチシダの中間的な形態形質を有することから、両者の雑種と考えられてきた。これまでハコネシケチシダは3倍体不稔雑種とされてきたが、申請者が香川県産ハコネシケチシダの染色体数を調べたところ、採取したすべての個体が2n = 160 の4倍体であった。香川県にはハコネシケチシダの親となるイッポンワラビが生育していないが、申請者が葉緑体DNA上のtrnL-F遺伝子間領域を解析したところ、香川県産ハコネシケチシダはすべてイッポンワラビと同一の塩基配列を持つことがわかった。これらの結果から香川県産ハコネシケチシダはこれまで報告例のない新奇倍数性をもつハコネシケチシダであることが明らかとなった。

目的

 そこで本研究では日本各地よりハコネシケチシダ及びその片親であるイッポンワラビを広く採集し、4倍体のハコネシケチシダの分布およびその起源について明らかにすることを目的とする。

方法

 まず和名の由来となっている箱根やその周辺である伊豆諸島においてハコネシケチシダを採集し倍数性を確認する。そして伊豆半島で採集したハコネシケチシダが3倍体であった場合、香川県の4倍体のハコネシケチシダと胞子のサイズまたは葉の表皮細胞のサイズが異なるかどうかを明らかにする。標本調査により4倍体のハコネシケチシダが生育している可能性が考えられる生育地のハコネシケチシダの産地からハコネシケチシダを採取し、4倍体ハコネシケチシダの分布状況について明らかにする。また複数の場所から4倍体ハコネシケチシダがみつかった場合、これらの4倍体ハコネシケチシダが1回起源により生じその後各地に広がったのか、それともそれぞれの場所で独立に起源しているのかを分子遺伝学的解析から明らかにする。

期待される成果

 ハコネシケチシダは雑種起源の3倍体種であるにも関わらず、その分布域は片親がいない地域にまで広がっていることがこれまで疑問であった。本研究を推進することによりハコネシケチシダが広い分布域をもつ原因を明らかにできる可能性がある。