植物研究助成

植物研究助成 26-23

籾殻由来の多孔質炭素粉体を添加した複合樹脂材料の摩擦しゅう動特性

代表研究者 木更津工業高等専門学校 機械工学科
准教授 板垣 貴喜

背景

 我が国では、米が年間約1,000万トン収穫され、これに付随して籾殻は約260万トン発生する。このうち約90万トンは廃棄されており、その有効利用が求められている。現在、申請者のグループでは籾殻を炭化焼成・粉砕することで得られる炭素粉体(以下、RHSC粉体)の開発や応用に取り組んでいる。RHSC粉体は多孔質、高強度で動摩擦係数も小さいため、プラスチックの摩擦しゅう動性を向上させる添加材として期待される。そこで、申請者らは、RHSC粉体をポリアセタール(以下、POM)に配合した複合樹脂材料(以下、POM-RHSC)で射出成形した歯車対の運転試験を行い、長寿命化、低騒音化の効果を確認した。一方で、適切なRHSC粉体の粒径や添加量、摩擦モデルの推定についてはさらに深く調査する必要性を感じたため、申請研究ではPOM-RHSCで射出成形した試験成形体の摩擦しゅう動特性を調査する。

目的

 POM-RHSCで射出成形した試験成形体の摩擦しゅう動試験を実施することで、複合樹脂材料の摩擦・摩耗におけるRHSC粉体の効果を明らかにし、その摩擦モデルを推定する。

方法

 はじめに、摩擦しゅう動試験装置を製作し、POM-RHSCで射出成形した試験成形体の摩擦しゅう動試験を行う。試験中の摩擦係数の変化を測定し、光学顕微鏡あるいは電子顕微鏡を用いて細かくしゅう動面を観察することで、POM-RHSCの摩擦しゅう動モデルを明らかにする。

期待される成果

 今後、世界的に農業廃棄物などのバイオマスの活用技術は注目が高まると推察される。申請研究は、毎年、世界中で安定して生産され、利用価値の無い廃棄処理される籾殻を有効利用し、安価で環境負荷も小さい高付加価値の製品開発を目指した基礎研究である。
 POM-RHSCは市販のPOMにRHSC粉体を単純に混入したものであるため、安価で容易にペレット製造や射出成形が可能であり、低コストで実用化・事業化が可能である。また、農業廃棄物に価値を見出すことで衰退の著しい農業の振興、低価格で高付加価値製品の開発で機械製造業の国際競争力の向上に寄与する可能性も高く、新しい分野の開拓として将来、必ず有意義となる。