植物研究助成

植物研究助成 27-12

植物細胞の常温ガラス化を成立に導く乾燥プログラムの開発

代表研究者 県立広島大学 生命環境学部
教授 荻田 信二郎

背景

 植物は、医薬化成品や加工食品等の原材料として広く重用されている。製品化するためには、採取適期まで生長した対象植物を必要量確保し、適切な状態で保存することが極めて重要である。しかし、目的植物の生長は地域や気候によって変動するため、供給減や価格の高騰、品質の良否など懸念材料も多い。したがって天然原材料確保のみに頼らない、生態負荷の低い新技術が必要となる。生態への負荷を軽減し、植物原材料を高品質且つ安定的に確保できるか?この解決策を本研究では提案したい。

目的

 問題解決の端緒として昨年度も多様な対象植物種の細胞培養系を高頻度に樹立・選抜し、生長や代謝を制御するシーズ技術を確立している。一方、選抜した植物細胞株は、高い専門技術で培養継続し続ける必要がある。この時、雑菌汚染や細胞株の変質などのリスクを伴うため、本研究では樹立した有用細胞株を簡易に、安定して保存し、必要に応じて再培養することが可能な新たなシステムを構築することを目的とした。

方法

 本研究の主な方法は、(1)対象植物細胞の高濃度糖処理など培養実験および、(2)各種乾燥処理を施した細胞の組織化学的解析、さらには(3)水分計による水分変化のモニタリング、(4)示差走査熱量計(DSC)によるガラス転移温度の計測 である。これらの方法により、昨年度に引き続いて植物の種子や花粉など乾燥状態の細胞で見られる常温ガラス化状態の、植物培養細胞での汎用化を目指す。

期待される成果

 植物細胞培養分野において「常温ガラス化」は、乾燥に比較的強いゼニゴケの培養細胞意外に知見が極めて少ない。したがって、各種有用植物細胞株で常温ガラス化を達成することは、学術的価値は極めて高い。関連学術論文の発表および実用化を視野に入れた特許取得を早期に達成することによって、医農薬やファインケミカル、食品等の産業分野で植物細胞培養の新規保存技術を応用した新たな事業発展を期待している。