植物研究助成

植物研究助成 28-11

環境保全林の生長と防火機能に関する実験研究

代表研究者 (公財)地球環境戦略研究機関 国際生態学センター
主任研究員 林 寿則

背景

 1970年代から始まった「環境保全林」造成事業は、民間企業や市民参加型の植樹活動によって広く普及している。しかし、環境保全林の生長を長期間にわたって測定・記録した資料は多くないことから、その苗木の生長や森林としての発達に関する評価手法は確立されていない。
 また、災害の多い我が国では、森林による減災機能への関心が高い。研究代表者は樹木の防火機能に関する研究を継続しており、環境保全林の防火効果についても研究対象に位置付けている。

目的

 熱海植物研究園をはじめとする日本の各地域に植樹された苗木の現時点における樹高・根元径や胸高直径の測定と既存資料の収集・解析に基づいて、環境保全林の発達過程を時間軸に沿って追跡し、その生長過程を定量的に評価する。
 また、環境保全林に広く導入される高木性樹種や都市域の街路樹に多用されている樹葉の耐火性・燃え難さに関する評価を試みる。

方法

 熱海植物研究園に植栽された苗木の生長調査(樹高、根元径、胸高直径の測定)を実施する。また、その他の地域に造成された環境保全林の生長調査および既存の生長調査データを加えて、経年的な変化に基づいて環境保全林の生長を比較・評価する。
 樹木の防火機能については、環境保全林の主木であるシイ類・タブノキ・カシ類、および阪神淡路大震災時に延焼を防止したと記録された樹木を対象として、樹葉含水率と小型電気炉を用いた加熱実験により、耐火性に関する基礎データを収集する。

期待される成果

 環境保全林の生長について、体系的に整理し評価することができる。さらにデータを蓄積することにより、地域ごとや樹種ごとの生長特性、海外における植樹と日本の事例を定量的に比較することも可能になる。
 防火機能に関する実験からは、火災延焼防止に寄与した樹種や環境保全林に導入される樹種の防火機能に関する基礎データ(含水率、耐火性など)を蓄積できる。