植物研究助成

植物研究助成 28-13

植物の水利用効率を可視化する技術の開発

代表研究者 東京大学
准教授 矢守 航

背景

 国内外において、過酷な乾燥ストレスに対する植物の応答機構は詳細に解析され、複数の植物種において乾燥ストレス耐性の向上例が報告されるなど一定の成果を収めている。しかし、乾燥ストレスが過酷にならない程度の水資源制限下で、高い水利用効率を実現する植物創成を手掛けた例は極めて少ない。今後、灌漑水を節減した条件下で、生産性を維持・向上する節水型農業が求められるため、植物の水利用効率の向上に関する研究は必須である。

目的

 作物が灌漑水の節減条件下で高い生産性を示すためには、植物自身の水分吸収能力や吸水量あたりの光合成能力 (つまり、水利用効率)を高めることが必要である。本研究では、植物の水利用効率を可視化する技術を開発し、水利用効率の遺伝的改良に向けた基盤研究を行うことによって、それら分子育種に適用するための研究戦略を確立することを目標とする。

方法

 水利用効率は、光合成速度と蒸散速度の比率として定義される。これまでの水利用効率の解析には、植物乾物重量や同位体分別等の破壊的な方法が用いられており、水利用効率に関する遺伝子群の網羅的把握のための迅速スクリーニングには適さない。そこで、本研究では、クロロフィル蛍光と葉温の可視化技術を組み合わせることによって、水利用効率の可視化を試みる。

期待される成果

 節水型農業を進めるために植物の水利用効率の向上を目指す必要がある。本研究課題によって、水利用効率の遺伝的改良に向けた基盤研究を進めることができる。投入資源を節減しながら優れた生産性を維持し、かつ環境と調和した農業を目指していくことは、途上国における生産性改善に寄与するとともに、作物栽培の低コスト化や節水農業が推進されているわが国においても重要な方向といえる。