植物研究助成

植物研究助成 28-15

植物群における個体間情報伝達を自動的に定量する技術の開発

代表研究者 筑波大学
助教 木下 奈都子

背景

 植物生態系の包括的な理解には、植物個体間におけるコミュニケーションに関する知見が欠かせない。その強力な研究手段の一つとして、非侵襲的なイメージング法を用いたリアルタイム画像解析を挙げることができる。
 バイオイメージング技術は、蛍光・発光タンパク質を用いた遺伝子工学の採用により、細胞・組織といったミクロなレベルにおける分子的な動態に関する理解の飛躍的な進歩に貢献した。
 一方、ミクロなレベルにおける分子レベルの動態に関しては豊富な知見があるものの、個体が高次に協調して機能するマクロな生態系レベルの解析ではバイオイメージング技術はほとんど利用されていないのが現状である。

目的

 本研究では、遺伝子工学と非侵襲的な画像解析を組み合わせ、個体間におけるコミュニケーションを可視化するシステムを構築し、シームレスな自動定量法を開発することを目的とする。

方法

 申請者は、植物が病害虫による被害を受けると揮発性免疫活性物質(香り)を放ち、周辺植物の免疫系を活性化するという現象に着目した。この香りを介した個体間コミュニケーションのメカニズムを解明するために、時空間的な解像度でこの現象を捉えるシステムを構築する。このシステムを用いて、植物はストレス下でどのような分子応答を繰り広げているのか、検出システムを構築して自動的に定量化できるシステムを開発する。

期待される効果

 生態系における個体間のコミュニケーションを定量的に解析することによって、数理モデリングが可能になる。このモデルでは、個体が高次に協調して機能するマクロな生態系において、分子レベルでの理解をこれまで生態学で蓄積された種の数や個体数に関するデータを組み合わせることができる。これによって、生態系とそこでの個体間の相互作用をより包括的に理解することが期待できる。