植物研究助成

植物研究助成 28-20

半自然草地における草本植物の三次元分布パターン解明のためのUAV計測技術の確立

代表研究者 東京大学 大学院農学生命科学研究科
助教 三浦 直子

背景

 近年、UAV(ドローン)技術が急速に発展し、同技術の汎用性が飛躍的に高まっており、これまで測定できなかった小型で形状の複雑な草本植物の三次元情報を、高頻度、広範囲で詳細かつ安価に明らかにできる可能性が出てきた。しかし、希少植物種の個体位置を把握・予測する際に有効なスケール(解像度)と、小型動物の営巣地分布を把握・予測する際に求められるスケールは異なることが予想される。前者は植物群落内の微小な(数cmスケールの)裸地とよく対応する一方、後者の場合、ススキ群落、ササ群落といった群落の個々のパッチの規模や密度、パッチ相互の位置関係を把握することが重要となる。このため、目的に応じてスケールの異なる調査が必要とされている。

目的

 本研究では、生物分布を規定する二つのスケールの異なる植物の三次元分布パターンを解明するためのUAV調査技術を確立することを目的とする。具体的には、植物個体スケールで観賞価値の高い草原性の希少植物であるノハナショウブとユウスゲの分布を、植生パッチスケールでカヤネズミが生息するススキ群落の定量評価を行う。

方法

 研究対象地は、溶岩台地上に広大なススキ草原が分布する静岡県朝霧高原である。ここは、年1回の火入れ管理が継続実施されており、豊かな生物相が確認されている。植物個体スケールでは、0.1haを対象に解像度4〜10mmで、植生パッチスケールでは、25haを対象に解像度3〜5cmでUAV撮影を行い、それぞれの解析に適切な解像度および計測仕様を判別する。UAVによる空撮を4-10月に月1回、植物分布調査を5-10月に月1回、動物調査を6,7,11月に行う。

期待される成果

 植物個体スケールの解析では、形態的に目立つ(大型の花をつけた)草本個体を自動識別できる。一方、植生パッチスケールの研究により、これまで現地植生調査に依拠していた広範囲の植生図作成を大幅に効率化できる。また、植物個体スケールから植生パッチスケールへとスケールアップをするモデルを構築することで、広域範囲のなかから効率的に微小スケールの希少種個体密度を推定できるようになる。草本類に依存して生息する動物の生息適地および分布推定が可能となる。