植物研究助成

植物研究助成 28-24

エフェクターを用いた次世代型抵抗性育種技術の開発

代表研究者 岡山県農林水産総合センター 生物科学研究所
JSPS特別研究員 中野 真人

背景

 青枯病菌はナス科作物をはじめ経済上重要な農作物に深刻な被害を引き起こす植物病原細菌である。青枯病の効果的な防除法は確立されておらず、抵抗性を示す食用品種の開発が農業現場で強く求められている。しかしながら、青枯病抵抗性は複数の遺伝子によって決定されており、従来の育種技術では交配後代の抵抗性を正確に評価することが困難なため、今日まで抵抗性品種は作出されていない。食用品種に青枯病抵抗性を付与するためには、植物の抵抗性を高感度かつ簡単に測定できる新技術を開発する必要がある。

目的

 植物は病原菌が感染した部位に防御応答を誘導し、病原菌を死細胞に封じ込めることで抵抗性を示す。この防御応答は植物の抵抗性タンパク質が病原菌の分泌タンパク質(エフェクター)を認識することで誘導される。本研究では、植物に認識される青枯病菌のエフェクターを特定し、抵抗性品種を作出するための分子ツールとして利用する。

方法

 青枯病菌のエフェクターを植物で発現させ、エフェクター認識時に認められる特徴的な防御応答を誘導するものを選定する。このエフェクターが誘導する防御応答を指標として交配後代の抵抗性レベルを評価し、食用品種に青枯病抵抗性を集約する。

期待される成果

 土壌中に生息する植物病原細菌の防除には、土壌消毒剤等の合成化学薬剤が主として用いられてきた。しかしながら、一部の薬剤はオゾン層の破壊につながる物質を含むこと、人体への影響が甚大であることから製造・使用が禁止されている。本研究により青枯病抵抗性を有する新品種を作出できれば、化学的防除法に依存した現状を打開し、低コストかつ環境への負荷が少ない防除法の開発を実現できる。