地球環境研究助成

地球環境研究助成01-04

インドネシアにおけるCCS実施法の社会実装に関する研究

代表研究者
明治大学名誉教授・研究知財戦略機構研究推進員
柳 憲一郎

研究目的

 インドネシアでは経済の急成長を遂げているが、同時に石炭依存度が高く、地球温暖化や大気汚染に伴う環境悪化も増大していることから、GHG(温室効果ガス)の大規模削減を実現するCCS(二酸化炭素回収・貯留)の導入・普及は必須といえる。しかし、インドネシアでは、CCSの包括的な法律及び関連法規が未整備の状況にあり、CCSの技術や貯留地域特性を考慮したサイトの長期管理、責任移転などの長期責任及びその財政措置に係る法律等が整備されていないこともCCSを実用化することの困難な要因の一つとなっている。こうした背景から、本研究では、インドネシアを主対象にアジア諸国における地域特性・貯留特性を考慮した地域CCUS(二酸化炭素回収・有効利用・貯留)システムの構築に向けて、わが国の技術を活用した地域のエネルギー供給及び大規模GHG削減を可能とするCCS-EORを中核技術に地域社会の炭素静脈循環システムの社会実装を支援する政策、制度の構築に資することを目的とする。

研究方法

 本研究では、過去に日本・インドネシアで実施された調査研究結果・成果に基づき、I. 技術的課題(貯留技術、CO2利用技術及びその導入可能性や費用対効果)とII. 法規制・制度的課題(国内の法政策、国際的協定、社会制度等)を統合的に取組み、地域CCUSシステムの社会インフラ及び事業化のロードマップ及びアジア域に適用可能なプラットフォームを研究する。

研究成果

 インドネシアでは、現行法を一部修正等により現在CCSを実証しようとしており、包括的な法律及び関連法規が未整備の状況であることが明らかになった。また現在CCUSの実施に関する大統領令の草案を準備しているが、CCSの技術や貯留地域特性を考慮したサイトの非恒久性による超長期管理、責任移転などの長期責任及びその財政措置に係る法律、さらに技術革新や社会インフラ整備のための産業政策が十分に考慮されておらず、CCSの長期に亘る適正実施を担保することが困難であることが考えられた。こうした背景から、本研究では、これまでの研究成果を踏まえインドネシアを主対象にアジア諸国における地域特性・貯留特性を考慮した地域CCUS(二酸化炭素回収・有効利用・貯留)システムの構築に向けて、わが国の技術や法制度を活用した地域のエネルギー供給及び大規模GHG削減を可能とし、地域社会の炭素静脈循環システムの社会実装を支援する政策、制度の構築に資することを目的とするものである。 この一年で多くのアセアン諸国でのCCSの包括的な法律及び関連法規の整備が急速に進み始めている。しかし、まだ途上の状況にあり、CCSの技術や貯留地域特性を考慮したサイトの長期管理、責任移転などの長期責任及びその財政措置に係る法律等が整備されていないことから、CCSの実用化を困難とする要因となっている。こうした背景から、本研究では、JCMパートナー国における地域特性・貯留特性を考慮する地域CCUS(二酸化炭素回収・有効利用・貯留)システムの構築に向けて、わが国の技術を活用した地域のエネルギー供給及び大規模GHG削減を可能とするCCS-EOR(石油増産回収)を中核技術とした炭素循環システムの社会実装を支援する。それを可能とする政策、制度の構築に資するための課題等について、検討した。また、アセアン地域における共通基盤の整備に向けても研究を行い、当該アジア域でのCCUSを推進するための課題などを明らかにしたものとなっている。

まとめ

 技術的課題及び法規制・制度的課題の研究成果に基づき、インドネシアのカウンターパート及び国内の検討協議会メンバーとの知見共有化を通じて、2つのロードマップ:①地域CCUSシステムの制度設計及び実装化に向けたロードマップ、②CCUSシステムの提示とその事業化ロードマップの素案を提示するとともに、他のアジア諸国に応用可能な地域CCUSシステムの共通プラットフォームを提示した。これらにより、アジア域でのCCUSの実施法制度を基盤とするアジア域の長期GHG削減目標の形成に寄与し、脱炭素に向けた持続可能な社会の実現に資することを期待し得る。

地球温暖化対策への貢献

 インドネシアを始め、アジア諸国における地域特性・貯留特性を考慮した地域CCUS(二酸化炭素回収・有効利用・貯留)システムの法制度構築は、現下のアセアン諸国の喫緊の社会的要請である。
 わが国の技術を活用した地域のエネルギー供給及び大規模GHG削減を可能とするCCS-EOR(石油増進回収法)を中核技術とするCCUSをアセアン諸国とわが国との二国間・多国間協定の基盤を整備することで、アジア域全体における地球温暖化対策に貢献することができる。
 本研究の成果は、インドネシアでのCCUSの事業化や商業化を円滑に進める際の具体的なCCUS法規制の包括的な枠組みやCCUSを普及させる政策・計画、関連法規の策定に寄与でき、二国間・多国間協定の締結に向け、実質的な基盤の構築を進めることが期待される。

主な成果発表

(1) Legal and political framework for CCUS with negative carbon emissions development in Asia, The 28th International Sustainable Development Research Society 2021, 6.2022.
(2) Legal Issues for Implementation Carbon Capture, Utilisation and Storage (CCUS) Technologies in the Asian Pacific Region, F&R Energy 2021 Conference (Virtual), 3.2021
(3) 『脱炭素とCCS―二酸化炭素回収貯留の法政策(第二版)』信山社、pp.1-420,8.2023.