復興支援特定研究助成

復興支援特定研究-03

研 究 題 目
小型ヘリコプタを利用した投下型長期線量測定デバイスの研究開発
所属機関・役職
東北大学大学院工学研究科・准教授
代 表 研 究 者
永谷 圭司

【研究目的】

本研究では,申請者が進めてきた、ヘリコプタ投下型小型移動ロボットによる火山観察システムのコンセプトを利用し、ヘリコプタ投下型小型線量測定デバイスによる長期線量測定の実現を目指す。

【研究方法】

本研究で実現を目指す線量測定のシステムは、線量測定デバイスと、ヘリコプタによるデバイス投下機構の2つから構成される。線量測定デバイスは、線量計、通信機、太陽電池パネルから構成され、長期間の線量測定を行うものとする。一方、ヘリコプタによるデバイス投下機構については、投下機構の研究開発を行う。
線量測定デバイスに搭載する空間線量の計測器については、研究代表者がこれまでに携わった原子炉建屋内探査ロボットの研究開発で得た知見を生かして選定する。一方、ヘリコプタによるデバイス投下に関する研究については、電動ヘリコプタに投下機構を組み込み、実環境におけるフライト/投下試験を繰り返し行うことで改良を進める。以上の研究を統合し、実環境における実証試験を行うことで、提案システムの有用性ならびに問題点の検討を行う。

【研究成果】

災害発生時に無人長期観測を行うための長期線量測定デバイスの開発を行った。このデバイスは、搭載した放射線測定器、太陽電池パネルによるバッテリ充電、携帯回線を用いた無線通信により、立入禁止区域内において、長期間無人で現場を観測することを可能とした。また、このデバイスの投下システムの研究については、投下時の衝撃を軽減させるため、マルチコプタにスカイクレーン型降下機構を取り付けた投下システムを開発した。上記のシステムの有用性を実証するため、研究室レベルの試験を実施した後、浅間山にて、フィールド試験を実施した。観測デバイスの投下試験については、マルチコプタが墜落したため失敗したが、ダミーウエイトによる降下試験については成功し、投下システムの有用性を確認することができた。一方、観測試験については、浅間山山腹にて2回の試験を実施した。1回目の試験では、観測デバイスは、発電状況と放射線量のデータを17日間送信し続けることに成功したが、天候不順による発電容量低下により、バッテリがダメージを受け、回復できなくなるという状況が起こった。不具合を改良して実施した2回目の試験では、強風の影響でデバイスが転倒し、10日目以降にデータを送信できなくなるという状況が起こった。 以上より、目標とする機能を実現するデバイスの開発には成功したが、実用化には、まだ課題が残されている。

【まとめ】

上記の研究成果で示した通り、実環境における長期線量測定システムの実現には、まだ解決すべき問題が幾つか残されている。特に、マルチコプタでデバイスを配備するためには、デバイス自体が小型軽量である必要があるが、軽量デバイスは、強風に弱いという矛盾を抱えている。今後は、安定した設置に関する研究を進めると共に、長期間の計測を行うことが可能なデバイスの改良を進める予定である。