市村アイデア賞

受賞団体訪問

やってみたいことを、とことん 追究する"われらの学園"
第42回(平成23年度) 最優秀団体賞 愛知教育大学附属岡崎中学校
生活科ルームで。応募した友だちを代表してインタビューに答えてくれた2人と、後列左から川崎教務主任、青山教頭、岩ア校長、古江理科主任
応募した友だちを代表してインタビューに答えてくれた4人と、
後列中央が矢ア校長、左が伊藤副校長、右が土居理科主任

「生活教育」を理念に 全教科で問題解決型の授業を展開

 第42回の応募数は過去最高の前回を3200人以上、40団体上回る17,093人(17,103件)、215団体。その中から最優秀団体に選ばれたのが愛知教育大学附属岡崎中学校です。個人賞でも朝日新聞社賞、市村アイデア奨励賞、佳作の受賞者を輩出しています。同校は昭和22年開校。現在第21代矢ア太一校長と26名の教職員のもと、486名の生徒が"学問と勤労を愛する学園""自由と規律を重んじる学園""楽しく 協力しあう学園""健康で明るい学園""人と物をだいじにする学園"を5本柱にした「われらの学園」(教育目標)を目指し勉学に勤しんでいます。
 開校以来、その教育目標に向け理念としているのが「生活教育」。生徒の身近な生活の中に問題意識を持ち、学びの意欲を高め、具体的に追究・体験し、解決していく問題解決型の学習です。解決までの過程を重視しすべての教科で展開。自由な校風の中、主体的に学ぶ将来を担う子供たちの育成が進んでいます。
トムソーヤの森にあるツリーハウスとビオトープ

自ら識者にアポを取り、取材もする… 全員が3年間取り組む伝統のf-MAP

 この生活教育のシンボルと言えるのがf-MAP。「fはforecast、future、frontier…、MAPはMy Action Plan。全生徒が自由に一つのテーマを決め、中学生活3年間を通じとことん疑問を追究し、理解促進、課題解決を図ります。30年以上も続いている当校の伝統で、2年前に就任した私は生徒が実に前向きに取り組む姿の素晴らしさに驚いたものです」と矢ア校長が説明してくれた、総合的学習の時間で取り組む個人追究活動です。文献やインターネットはもちろん現場見学や外部の関係者に話を聞いて調査を推進。6月と10月の発表会では3年生が1年生を指導したり、ノウハウを教え合ったりします。「その中で、生徒同士でお互いの素直なリスペクトが育まれています」(矢ア校長)。
 そして3年生の4月の修学旅行では、4日間のうち2日間がf-MAPにあてられ、共通するテーマを持った生徒で組んだ班ごとに、自ら事前にアポを取った大学等研究機関、役所、企業、国会議員、博物館、商業関連諸施設等々で専門家や識者を取材、最終発表に向けてまとめていきます。
テーマはウイルス。修学旅行で大阪大学の教授に、映像も見ながら取材し免疫の理解を深めました(3年生)。
動物の殺処分防止を目的に近くの愛護センターの所 長に話を聞き、命の大切さを再認識しました(2年生)。
生活弱者の原因と解決策の一環で、コープ愛知の配送センターで買物難民問題を取材しました(1年生)。
 こうした生徒たちのテーマは「言葉」「日本の裁判」「スポーツ医学」「香料の魅力と可能性」「教育の道筋」「音楽の力」「海上保安官」等々と多岐にわたります。
こうした書架が校内随所に置かれている
こうした書架が校内随所に置かれている

8〜9割が自主参加 生徒の自信につながる市村アイデア賞

 岡崎中が市村アイデア賞に応募を始めたのは7年前、夏休みの課題の一つとして生徒が自主参加しています。「この賞の意義は、身近なところにテーマを持った自発的な発想、問題解決へのプロセス、そして人に説明できる記述に評価のポイントが置かれている点にあります。それはf-MAPと共通する面であり、またアイデア創出が苦手という生徒には、とにかく自由に発想すること。ゼロからでなくても、例えば消しゴム付鉛筆のように、今あるものを組み合わせる、あるいはちょっと工夫を加えてみる。実現は不可能かなと思っても構わないとアドバイスするうち、4年前頃から8〜9割超の生徒が夏休みの課題に選んで取り組んでいます」(理科主任の土居哲也先生)。
 9月の理科の最初の授業は全クラスとも応募アイデアのプレゼンテーション。生徒同士が質疑応答し先生が1件ずつにコメントします。土居先生は「中には自分のアイデアについて長々と熱弁を振るう子もいます。が、こうした発表する機会を得ることが生徒の自信につながり、私たち教師にとっても教育に有効に利用できます」と言い、「市村アイデア賞はいつまでも継続していただきたい」と語っていました。

楽しみ、次への夢を持って創造する そういう生徒たち、自分の力で伸びてほしい

 今回、9割を大きく超えて応募した454名の生徒を代表し4名に発想のきっかけなど聞きました。
三角形の合同が完成への大きなカギになりました。家にある余った材料で誰でも簡単に作ることができます。これからは兄が大学で勉強している宇宙工学も取り入れたアイデアを練りたい(「どれも同じ大きさケーキカッター」を創った3年生)。
家族旅行の忍者屋敷体験から発想した私の秘密の小物入れ。引出が自動で閉まる、閉めると音が鳴る、他の人は開けられない、二重底やだまし絵のある引出をつける等、結構楽しみました。次は家族のために(「面白忍者小物入れ」を創った2年生)。
父が庭の芝生の雑草除去に苦労しているのを見て、雑草と芝生の伸び方を観察。雑草だけを枯らす道具を発想し、道具の形状から"枡"にしました(「隣の芝生よりきれいに見せ枡」を創った1年生)。
扇風機を首振りにすると人のいない所まで回ってしまい涼しさがもったいない。で、自由に範囲を決められる装置を考えました。家族も喜んでくれました(「いかないで!扇風機」を創った1年生)。
 こうした生徒を見つめつつ伊藤雅朗副校長も、「自然はみんな自浄作用で生き存在している。生徒たちみんなも当校の伝統を受け継ぎ、自分の力で伸びていく強さを持ち、見極めができる人に育ってほしい」と熱い思いを寄せています。
各コンクールで入賞した創意工夫作品の展示コーナー
(取材日 平成24年2月16日)