受賞団体訪問
「天賦の力」を信じて、創意工夫の才能を伸ばす |
第48回(平成29年度)最優秀団体賞 愛知県刈谷市立 双葉小学校 |
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不便さを創意工夫で解決した8作品の受賞者と、神谷校長(後列左)、理科担当の磯村教諭(後列右)
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「真摯に、学び、諦めない」、これが双葉小の根幹です |
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第48回市村アイデア賞には、全国から合計32,413件の応募があり、応募団体数も351団体を数えるなど、例年以上の盛り上がりを見せました。その中で、最優秀団体賞に選出されたのが、個人賞でも8名の入賞を果たした愛知県刈谷市立双葉小学校(以下、双葉小)です。昭和33年、前身である野田小学校と半高小学校の統合校として設立。半世紀以上経った今も、580名の児童が毎日勉強に励んでいます。そんな双葉小のレジェンドの一つとして挙げられるのが、卒業生にフェライト磁石の発明で世界的にも高名な加藤与五郎博士を輩出していること。博士から贈られた「天賦の力を伸ばそう」という言葉を軸に、「まじめに なかよく がんばろう」の校訓を定め、健康でたくましい心身の育成に力を注いでいます。 「まじめには、目の前にある現実をよく見て、目をそらさないこと。なかよくは、徹底的に議論はしますが、他人の言葉から学ぶこと。がんばろうは、心を込めて粘り強く取り組む、ということです。何事にも真摯に、諦めずに学ぶ心をもちなさいと、日々子どもたちに言っております」と神谷拓生校長は語ります。
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豊かな発想力を育む、多数の体験と対話的授業 |
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双葉小は、今回受賞した最優秀団体賞の前にも、毎年のように団体賞および個人賞に入賞しており、市村アイデア賞の常連校です。同校ではこうした発想力豊かな児童を育むために、何よりも体験と経験が必要だと考え、活動しています。5月には理科の作品展である「全国ジュニア発明展」に全校児童で参加。6月の土曜日には、児童と保護者が一緒に科学を学ぶ「親子ふれあいサイエンス」行事を、学校全体で開催。そして夏休みには、全児童が一人一研究として、創意工夫作品または理科研究のどちらかの課題挑戦をすでに30年以上続けています。教職員側も、夏休みの課題や市村アイデア賞では、アドバイスやプリント指導、展示物等で、児童と保護者が課題をより理解し、児童の解決力がアップするようサポートします。 「基本的なサポートしかしてませんが、どの子も驚くほど頑張って、しっかりした作品を作ってきます。経験という意味では、単に実験するだけでなく、問題解決型の授業を取り入れ、子どもたち同士が議論しあう“話し合い活動”を重視しています。生活や授業の体験から、真似ではない、自分の考えをたくさん発言することで、それが将来の独創性につながって欲しいですね」と、理科担当の磯村侑加教諭。こうした理科研究の成果は、理科室に展示や掲示をされ、いつでも見られる参考例として、翌年の作品づくりの原動力になっています。
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市を挙げてのバックアップで、創意工夫の指針が定まる |
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刈谷市の全市を挙げてのバックアップ体制も注目点です。特に理科教育には力を入れており、例えば市の推進協議会作成の「理科研究・創意工夫工作ガイド」が市内すべての小学1・4年生と中学1年生に無償で配付されています。冊子には、3年分の作品作りの計画書と、これまでの入賞作品の写真やデータが載っており、担任教諭からのアドバイスや、創意工夫の指針にできることがポイントです。 「研究とは身の回りの当たり前のことの中から、不思議さを見つけて、それを掘り下げるものだと思います。刈谷市の場合は単純な工作にとどまらず、生活の中の不便さを解決するものづくりを推奨しており、まさに創意工夫の力が必要です。これは市村アイデア賞の理念とまったく合致していて、30年ほど前から毎年応募させていただくきっかけにもなりました」と神谷校長。
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今回も独創性ある8作品が個人賞を受賞 |
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自分の考えや思いを話し合いながら、日々「まじめになかよくがんばろう」でアイデアを磨く子どもたち。今回はどのような発想で、作品づくりに取り組んだのでしょうか。最後に、入賞した8名のみなさんに聞きました。
取材後、校舎を見学すると廊下の一角には加藤与五郎博士の展示コーナーが。博士の偉大な功績のごとく、創意工夫のDNAを受け継いだ双葉小の児童たちの才能は、今日もすくすく育っているように感じました。
(取材日 平成30年2月9日 愛知県刈谷市)
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