受賞団体訪問
「成功体験」が伸ばす子どもたちの工夫と想像力 |
第49回(平成30年度)優秀団体賞 愛知県刈谷市立 住吉小学校 |
身近な生活の中からアイデアを生み出した6作品の受賞者と、
鈴木校長(右から4人目)、理科主任の黒宮教諭(左から3人目) |
地道な取り組みと継続が力 |
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今回で49回目を迎えた市村アイデア賞は、33,035件という前回を上回る応募を全国からいただきました。また、応募団体も380団体と前回より30団体近くも増加するなど、応募作品のレベルもさることながらますますの盛り上がりを見せています。 その中でもトヨタグループの発祥の地であり、今もトヨタ系企業の本社が数多く存在するもの作りと技術の町、刈谷市は、市村アイデア賞の常連校がひしめく激戦区です。第49回の優秀団体賞に、この激戦区から刈谷市立双葉小学校とともに選出されたのは、個人賞でも朝日小学生新聞賞を含む6名の子どもたちが入賞を果たした、愛知県刈谷市立住吉小学校(以下、住吉小)です。 住吉小では、毎年夏休みの課題として、子どもたちに市村アイデア賞に取り組んでもらい、1年生から6年生までの多くの子どもが応募をしています。また、中学校の理科教諭出身の鈴木校長自ら「理科だより」や「市村アイデア賞応募用紙のかきかた」を作成して配付するなど、先頭に立って指導を行っています。中学で教鞭を取っていた30数年前から市村アイデア賞の応募に関わってきた鈴木校長は、「理科教諭として中学で得たものを小学校でも生かせればと思ってやらせてもらっています」と語ります。
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子どもたちに自分の考えを具体化させるための指導 |
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「住吉小では、校長先生が先頭に立って、もの作りという方向に子どもたちの目を向けていただいているので、子どもだけでなく、我々教員にも刺激になっています」と語るのは理科主任の黒宮教諭。住吉小では、鈴木校長が作成された「市村アイデア賞応募用紙のかきかた」を基に、子どもたちが自分たちのアイデアをまとめ、応募しています。また学校のHPには、過去の応募用紙の見本やアイデアの参考になるWebサイトの紹介、さまざまなコンクールの受賞作の情報がアップされており、子どもたちの発想のヒントになっています。 ただ、やはり一番重要なのは、担当教諭からの指導やアドバイスです。「写真を撮る時は必ず違う角度から複数枚撮影する」「この部分は何で作られている?」「ここにはどんな工夫をしている?」など、具体的な指導や指摘をすることで、子どもたちが自ら考え、工夫をしていきます。このような担当教諭の細やかな指導が結果に大きく影響するそうです。 文章での表現が苦手な子どもや、なんとなく絵だけしか描いていない子どもも、質問をすると答えてくれることが多いそうです。「考えを引き出して、応募用紙に具体化させることで子どもたちは自信を付け伸びていきます」と黒宮教諭。
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担当教諭の成功体験が子どもたちを導く |
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刈谷市では、市村アイデア賞などの理科コンクールの指導方法について、学校間でも情報交換を行っています。しかし、「指導は個人のエネルギーを使う部分ですから、知識で分かっていても、実際の結果につながるところまで指導ができるかという部分で難しさがあります。そのために必要なのは指導側の成功体験です」と鈴木校長は言います。 「こういう指導をすれば結果が得られる」という成功体験をもっている教諭は、結果を出すために必要な努力として、指導にエネルギーが注げます。その結果、コンクールで入賞できた子どもは、自身の成功体験で自信が付き、周囲の目標になっていきます。そして、子どもたちの自信と意欲が担当教諭のモチベーションの向上にもつながっていきます。住吉小の数々の受賞歴にはこのような担当教諭と子どもたちのプラスの連鎖が働いていることが分かります。先頭に立って指導してきた鈴木校長の、これまでの成功体験に基づくノウハウが浸透した結果です。
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家族を楽にするアイデア溢れる個人賞受賞の6作品 |
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朝日小学生新聞賞をはじめ、個人賞入賞を果たした6作品は、どのアイデアも家族が日常生活で困っている部分を改善するという、身近な問題を解決するものばかり。子どもたちはどういう視点でアイデアを思いついたのでしょう。最後に入賞したみなさんに聞きました。
(取材日 平成31年1月24日 愛知県刈谷市)
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