受賞団体訪問
豊かな自然環境が育む 子どもたちの個性と自主性 |
第50回(2019年度)優秀団体賞 愛知県刈谷市立 富士松北小学校 |
気づかいにあふれたアイデアで個人賞を受賞した子どもたちと、
浅田校長(右端)と理科主任の水野教諭(左端) |
自分で考えることで「学ぶ喜び」を知る |
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元号が令和に変わり新しい時代を迎えた第50回の市村アイデア賞は、34,697件という前回を超える多くの応募を全国からいただき多いに盛り上がりを見せています。 第50回は16の小・中学校および団体が団体賞を受賞されました。その中から、今回は第33回奨励団体賞以来の二度目の受賞で優秀団体賞を受賞され、個人賞でも朝日小学生新聞賞を含む4名の子どもたちが入賞を果たした、刈谷市立富士松北小学校(以下、富士松北小) にお伺いしました。 富士松北小は刈谷市北部に位置し、学校に隣接して児童の愛称「富士北っ子」を名前に冠する北っ子の森や岩ヶ池があり、少し離れた小堤西池には天然記念物に指定されているカキツバタの自然群落があるなど、豊かな自然環境に恵まれた地域にあります。また「『知・徳・体』のバランスのとれた児童の育成を目指して、理科だけでなく子どもたちそれぞれが得意とするさまざまな面を伸ばしていきたいと思っています」という浅田校長の言葉どおり、環境を生かした自然教育や環境教育だけでなく、刈谷北部の特産品である切り干し大根作りや竹炭作りなど地域との交流の中での活動や、金管バンド部、スポーツの活動など幅広く子どもたちの興味や自主性が育まれています。 理科教育においては、今年度から学校全体の研究主題として「学ぶ喜びを味わう授業をめざして」を掲げているそうです。疑問を喚起する実験を通して子どもたちが自分で問題解決の方法を考え、対話の中で深い学びに至る授業づくりを行っています。浅田校長は「子どもたちが興味をもつ『導入の工夫』が大事です」と語ります。水の温まり方の実験で、火に近いビーカーの底にあるうずら卵より、ビーカーの上のほうにあるうずら卵のほうが早くゆで卵になることを見せると子どもたちは不思議に思い、なぜだろうと真剣に現象を解明していくそうです。このような興味をもたせる導入の工夫によって、子どもたちは現象を解明する実験の方法を考えるレベルまで進んでいくのだそうです。
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問題解決を積み重ねることで成長する |
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富士松北小では、夏休みに「サイエンスだより」を子どもたちに配付しています。この「サイエンスだより」には、市村アイデア賞応募のためのアイデアのヒントや作るときのポイントなどが載っており、これを基に子どもたちがアイデアを出します。そして、子どもたちからの問いかけや相談に、先生方が日々の中でさまざまなアドバイスをして形にしているとのことです。理科主任の水野教諭は「特に特別なことや決まった指導はしていないのですが」と語りますが、特別な指導をしない中で、子どもたちが自分でアイデアを考えそれを具現化できている裏には、やはり先生方の細やかな指導と情熱があることを感じます。また「身近にあるもので問題解決をしていく体験を繰り返すことで、子どもたちの理科への興味や理解を育んでいきたいと思っています」と水野教諭が語るように、日常の中で子どもたちに問題解決の経験を積み重ねさせていることが、市村アイデア賞の入賞という結果に結実していると感じます。 「子どもたちは、好きになれば自分からどんどん取り組んでくれます。少しずつですが、こうして種をまいてきた取組が形になってきていることをうれしく思います。これからも学ぶ喜びを大事にしていく教育をしていきたいと思っています」浅田校長は最後にこう語ってくれました。まさにこの地道な種まきこそが、今回の優秀団体賞と4人の個人賞入賞を生んだ大きな要因と言えるでしょう。
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他人を気づかう視点から生まれたアイデア個人賞受賞の4作品 |
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個人賞入賞を果たした4作品は、どれも誰かを助けよう、楽にしてあげようという思いのこもったアイデアばかりです。特に、身体の不自由な人や被災した人たちに向けたアイデアには感心しました。最後に入賞したみなさんに聞きました。
(取材日 2020年1月14日 愛知県刈谷市)
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