受賞団体訪問
自らの体験と地域の努力が花開かせる子どもたちの力 |
第51回(2020年度)優秀団体賞 愛知県刈谷市立 刈谷南中学校 |
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個人賞を受賞した8名の生徒と中村校長(左端)、理科主任の深谷教諭(右端)
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コロナ禍でも揺るがない姿勢 |
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2020年、世界中を覆った新型コロナウイルスの脅威。第51回の市村アイデア賞はこの誰もが予想していなかった状況のなか23,988件の応募をいただきました。 今回通算9回目の団体賞と8人の個人賞受賞を果たした刈谷市立刈谷南中学校(以下、刈谷南中)は、市村アイデア賞の受賞常連校と言える存在です。しかし、今年度は休校や夏期休暇の短縮など不測の状況が続きました。コロナ禍のなか、刈谷南中ではどう対応していたのかお聞きしました。中村校長は「未履修を作らないため、夏期休暇を短縮するなどの対応を迫られました。しかし、どの教科においても教員が『生徒主体の学びを大切にする』という今までの姿勢を揺るがすことなく、授業方法を工夫してくれました」と語ります。理科については、4月5月の休校の際には教員が実験動画を作成して配信。授業再開後はマスクにフェイスシールドを付けて実験を行なうなど、さまざまな工夫をしながら生徒が学びの機会を止めない工夫をしたそうです。「教科書や黒板に書かれていることを説明するだけでは理科の力はついてきません。生徒が直接体験することが理科教育の根幹です」と理科担当の近藤教諭は語ってくれました。
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地域の力が支える生徒のモチベーション |
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刈谷市では今年度の市村アイデア賞は自由参加という形になりました。しかし刈谷南中では前年と変わらない数の応募がありました。「生徒たちには、小学生のときから発明や工作への高いモチベーションと経験があります。今回応募数に変化がないことから、改めて生徒の意識の高さを感じました」と中村校長。受賞者インタビューのなかでも全員が小学生時代から毎年市村アイデア賞に応募しており、当たり前のように新しいアイデアを探している日常を話してくれました。 また、この生徒の意識の高さは学校だけではなく、地域全体の活動で支えられているのが刈谷の特色です。刈谷市は多くのトヨタ系企業の本社が置かれており、ものづくりの魅力を企業がエンジニアを派遣して出前授業を行なうなど積極的に伝える活動を行なっています。また、少年少女発明クラブや市の施設である夢と学びの科学体験館にOBの理科教員が配置され、学外で生徒の発明・工作をサポートしています。
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ひとりひとりが考える環境を作れば生徒は育つ |
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長年継続されてきた地域全体での活動で育まれた子どもたちの科学やものづくりへの興味ですが、それを発明・工夫として形にしていくのはひとりひとりの考える力です。刈谷南中では日常のなかでこの姿勢が徹底しています。近藤教諭は「教員は入り口の扉を開けるだけでいいんです」と語ります。また理科主任の深谷教諭は「科学部などでは生徒同士先輩から後輩に受け継いでいく部分を大事にしています」と語ってくれました。教員はきっかけを与え、生徒が先輩の姿を見て自分なりに考えていく。これにより教員もふくめた対等のディスカッションのなかで生徒の自主性、考える力が磨かれていっています。 「刈谷南中の生徒は自分の考えをきちんと伝える力を持っています。そして社会に役立つには何ができるかを真剣に考えてくれています。これこそ私たちが生徒を育てていく方向であり、市村アイデア賞などの経験が結実している証だと思っています」中村校長は最後にこう語ってくれました。 |
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日常生活の観察から生まれるアイデアたち |
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初受賞の生徒もいましたが、全員が小学生のときから身近な生活をよりよくするアイデアを考え続けてくれています。最後に入賞したみなさんにお聞きしました。
(取材日 2021年1月22日 愛知県刈谷市)
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