市村アイデア賞

受賞団体訪問

多様な学びを通して育成される生徒の自主性と創造力
第51回(2020年度)努力団体賞 個人賞入賞1作品 京都市立 下京中学校
個人賞受賞生徒と山田敦校長(右端)、理科担当の和田正裕教諭(左端)
個人賞入賞者3名と池田敬治校長(左端)、入江伸一教諭(右端)

市村アイデア記念賞 「ゆびわフィルム」
 賞をもらえるとは思っていなかったので驚きました。祖母が豆腐のフィルムが剥がしにくいと言うのを聞いたのがこのアイデアのきっかけです。「すぐに実用化してほしい逸品」と評をいただいたのがうれしかったです。もの作りも好きなのですが、いろいろな人が持っているけど表に出せていないアイデアを僕の力で引き出して発信できるような人間になりたいです。(3年)


コロナ禍を乗り切る学校の姿勢と生徒の協力

 第51回市村アイデア賞では、京都市立下京中学校(以下、下京中)が初の応募で努力団体賞と個人賞の受賞を果たしました。下京中はJR京都駅からほど近い東本願寺が校舎からよく見える京都の町中に位置しています。2007年に五つの中学校が統合して生まれた創立14年目の下京中では、ディスカッションやプレゼンテーションを多用した対話的で生徒の考える力を育成する授業を行なっています。「統合によりすばらしい環境がいただけましたので、教員も新しい授業方法などを研究していく土壌ができています。来年度からの新学習指導要領では資質・能力の育成が目指されていますが、本校は率先して新しい授業の試みを実践していきたいと思っています」と山田校長は語ります。
 2020年度の新型コロナウイルス感染拡大のなか、下京中も4月から二カ月間臨時休校となりました。しかし「これまでの教育、授業方針を後退させない」という山田校長の指示のもと、教員一同より効率的な授業の工夫・研究をしていったそうです。
 理科については、実験動画をYouTubeにアップするなどの活動や、授業再開後は早々にフェイスシールドを着用しての観察・実験を行なうことで、通常に近い形での授業を行なってきました。「夏場はフェイスシールド着用での授業は暑いので大変です。設備を整えてくれた学校にも感謝していますが、大変な環境下で文句も言わずに授業に取り組んでくれた生徒たちにも感謝しています」と理科担当の和田教諭は語ってくれました。
京都市立下京中学校正面エントランス
京都市立下京中学校正面エントランス

1、2年時の学びの積み重ねが生む豊かな発想

 今回、下京中の応募は3年生を対象として行なわれました。指導された和田教諭は、前任の学校でも応募の経験があり「前回は初めての応募で、生徒と一緒に楽しもうという気持ちでしたが、今回は『創造力の育成』という明確な目標のもとに参加させていただきました」と語ります。しかし、コロナ禍のなか生徒のアイデアの検討やフィードバックを行なう時間がとれず、夏休み前の授業で過去の受賞作品を生徒に配布して「何が求められているか」を考えるように指示することしかできなかったそうです。それでも夏休み明けにはほぼ全員がアイデアを形にして提出してきました。「3年間の集大成というと大げさですが、1、2年時に学んできたことによって短い期間でもみな成果が挙げられたのだと思います。生徒たちの発想の豊かさに改めて気づかされました」と山田校長。
 下京中は校是に『志 きらめく Art Science Toughness』を掲げています。「なかでもscienceは大事な柱だと思っています。論理的に考える力、解決していく力、創造していく力の育成は学校教育の重要な部分です。今後も理科や科学の教育にしっかり向き合っていきたいと思います」と最後に山田校長は力強く語ってくれました。

(取材日 2021年2月15日 オンライン取材)