市村アイデア賞

受賞団体訪問

みかんの里で育まれる素直な感性と地域への愛着
第56回(2025年度)努力団体賞 個人賞1作品受賞 諫早市立 琴海中学校
個人賞受賞者と伊東郁記校長(右端)と理科担当・鈴木隆治教諭(左端)。
個人賞受賞者と伊東郁記校長(右端)と理科担当・鈴木隆治教諭(左端)。

佳作 『コンセント・するっと抜けるくん!』
シンプルで実用的なナイスアイデア!
「このアイデアには自信があったのですが、実際に受賞したと聞いたときは、ガッツポーズをするくらい嬉しかったです。このアイデアのきっかけはおばあちゃんが困っていたからなのですが、身体の不自由な人や低年齢の子供にも役に立つようにと考えました。将来はアイデアとか好きなことを生かした仕事をしたいと思います」(中2)


地元愛に支えられた小規模校の力

 第56回市村アイデア賞において、諫早市立琴海中学校(以下、琴海中)は初応募で団体賞と個人賞(佳作)受賞を達成されました。
 琴海中は長崎県のほぼ中央に位置する諫早市の西、多良見町伊木力地区にあります。大村湾に面し山にはみかんの段々畑が広がる豊かな自然に恵まれた地域です。特にみかんは「伊木力みかん」のブランドで各地に出荷されており、名産品として地元の人々の誇りになっています。こうした地域に対する思いは若い世代でも同様で、「三世代同居の家庭も多く、生徒たちは家の手伝いをよくしています。その影響か進路希望でみかん農家を継ぎたいと語ってくれる生徒が多くいます」と三年生の担任でもある理科担当の鈴木教諭。また、ここで育って都市部に出て行った若者も子育て世代になって戻ってくるケースが多いとのこと。世代を問わず地元に対する愛着があることがわかります。こうしたのどかで地元愛あふれる環境の琴海中ですが、全校生徒45名という諫早市内で一番の小規模校でもあります。運動や文化面での活動が難しいという悩みもあるそうですが、今回の市村アイデア賞には39名と全校の9割近くの生徒が参加しています。「うちの学校が個人賞だけでなく、団体賞もいただけたということで、学校の規模に関係なくしっかりやれる力があることを見せられたと喜ばしく思っています」と伊東校長は穏やかな笑顔で語ってくれました。


みんな暮らしやすいこの地域に愛着があります。と伊東校長。 生徒の成長のためにも地道に応募を続けます。と鈴木教諭。
みんな暮らしやすいこの地域に愛着があります。と伊東校長。 生徒の成長のためにも地道に応募を続けます。と鈴木教諭。

どんなアイデアも否定をしない姿勢

 今回市村アイデア賞の応募を指導された理科担当の鈴木教諭は、琴海中に赴任されて1年目ですが、前任校の西諫早中で3回市村アイデア賞への応募経験があり、受賞者も出しているベテランです。
 琴海中での初めての挑戦について鈴木教諭は「市村アイデア賞は教科書的なレールの上を進むのとは違い、生徒が自分自身で考えることが求められるので、発想力や思考力も鍛えられます。またアイデアだけで勝負できるので、幅広い層の生徒たちが自信をつけるよい機会だと思いました」と語ってくれました。
 鈴木教諭が初めて市村アイデア賞の話を生徒にしたのは、夏休みの一カ月ほど前でした。まずは生徒の興味を引くために、参加賞や受賞すると奨学金や東京の授賞式にも招待されることなど、インセンティブを中心に説明したそうです。その上で、夏休み前の授業で改めて過去の受賞作品を見せ生徒にアイデアを考えさせる、という二段階のアプローチをされました。
 鈴木教諭に苦労したことを尋ねると「苦労ではないですが、配慮したのは『生徒のアイデアをつぶさない。否定しない』ということです。すでに商品化されているとしても、生徒が自分の力で問題を解決しようと考えたことは評価してあげたいと思っています」と語ってくれました。
 のびのびとアイデアを考える生徒と、それをきちんと受け止める姿勢。これが初応募初受賞に琴海中を導いた要因だと感じました。
 最後に伊東校長は「これからの世の中では理科的な部分は非常に大事になってくると思います。そういう意味で、市村アイデア賞のように自分たちの生活を良くするアイデアを募集するのは理にかなっていると思います。本校の生徒たちも今回の受賞をきっかけに、普段の生活のなかからちょっとした工夫をしていく姿勢を持ち続けてほしいと期待しています」と語ってくれました。

校庭から臨む琴海中学校。裏山中腹には長崎本線(旧線)が通っている。
校庭から臨む琴海中学校。裏山中腹には長崎本線(旧線)が通っている。

(取材日 2026年1月21日 長崎県諫早市)