市村産業賞

第41回 市村産業賞 功績賞 -01

プリント基板穴あけレーザ加工機の高速化技術

技術開発者

三菱電機株式会社 先端技術総合研究所 加工制御システム技術部
専任 高橋 悌史

技術開発者

同 社 生産技術センター 構造化技術推進部
専任 小林 信高

技術開発者

同 社 名古屋製作所 レーザシステム部
専任 鉾館 俊之

推  薦 社団法人 日本電機工業会

開発業績の概要

 携帯電話、パソコン、デジタル家電の高機能化、小型化に伴い、内蔵されるプリント基板の高密度化への要求は年々厳しくなっている。プリント基板の配線密度は、回路パターンを層状に積み重ね、層間を穴径50〜100μmの微細な導通穴(ビア穴)で接続するビルドアップ工法により格段に向上した。しかし、1998年には基板1枚あたり平均3万穴であったビア穴数が2006年には20万穴以上と8年間で約7倍に急増し、実用的な時間でプリント基板を生産するためには穴あけ速度の革新的な向上が必須課題となっていた。
 本開発技術は、微細なビア穴を加工するプリント基板穴あけレーザ加工機の高速化に関するもので、加工機の構成を多方面から見直した独創的かつ総合的な技術開発(図1)により、4500穴/秒と7.5倍の加工速度を達成している。開発要素技術はつぎの通りである。(a) マルチビーム光学系:加工ヘッド内でレーザビームを分割し、各レーザビームをガルバノスキャナにより位置決めした後に合成し、1つのfθレンズに入射させる独自の光学系を構成し、加工品質を低下させることなく1つの加工ヘッドで2穴の同時加工を実現。(b) 高速デジタルガルバノスキャナシステム:自社開発高性能ガルバノスキャナ、および高速高精度制御を実行する高速デジタルコントローラにより、ビーム位置決めを高速化。(c) 大面積fθレンズ:高度な光学系設計および製造技術により、ガルバノスキャナのビーム位置決め範囲を従来の約2倍に拡大。(d) 大出力CO2レーザ発振器:高速加工実現に必要なパワーを供給するためにレーザ発振器を高速高出力化。(e) マルチ加工ヘッド光学系:加工機内に設置した2つの加工ヘッドそれぞれにレーザビームを分光して入射させ、マルチビーム光学系との併用により4穴の同時加工を実現。開発要素技術を搭載した加工機(図2)は、コンパクトな外観ながら業界トップクラスの生産性を実現した。穴加工例を図3に示す。
 レーザ発振器からfθレンズに至る全てを自社開発している強みを活かし独創的技術を搭載した本加工機により、プリント基板のビア穴数の急激な増加に対応した高速かつ高精度な加工を実現することで、高密度実装技術の進展を促し、携帯電話やデジタル家電の普及に大きく貢献している。

図1 開発加工機の構成
図1 開発加工機の構成
図2 開発加工機の外観
図2 開発加工機の外観
図3 φ50μmビア穴加工
図3 φ50μmビア穴加工