市村産業賞

第42回 市村産業賞 功績賞 -01

柔軟性を有する結晶性グラファイトの開発と実用化

技術開発者

パナソニック プロダクションテクノロジー株式会社 外販事業推進グループ
チームリーダー 西木 直巳

技術開発者

パナソニック エレクトロニックデバイス ジャパン株式会社
セラミックディビジョン 主任技師 久保 和彦

技術開発者

長崎総合科学大学
理事 吉村 進

開発業績の概要

 携帯電話などのモバイル電子機器の軽薄短小化、高機能・高性能化が急速に進む中、CPUなどからの発熱をいかにして逃がすかが大きな課題になっていた。放熱/熱拡散のために、薄くて軽く、高い熱伝導性を有する材料が求められ、熱伝導率が銅の倍以上の結晶性グラファイトへの期待が高まっていた。また、実用化に際しては実装の高密度化に対応するため、熱源形状に沿うことができる柔軟性も要求された。
  受賞者らは、特定高分子(ポリイミド等)から、水素、酸素、窒素を加熱により順次切り離し、残った炭素原子をさらに加熱することにより再結晶化させてSP2結合構造を作り、結晶性グラファイトを生成する高分子グラファイト化法を開発した。その結果、従来の炭化水素ガス堆積法ではできなかった薄板や柔軟性の付与(図1)を世界で初めて実現した。本方式によるグラファイトは単結晶の集合組織であるが、粒界の存在が曖昧であることも寄与し、単結晶体のような挙動及び特性を示す。また、層状の結晶構造であるため、その層方向では熱伝導率、弾性率、強度が物質中トップクラスの特性を有する一方で、厚さ方向は熱伝導率が約100分の1であり、熱伝導方向の制御も可能となる。
 柔軟性を有する結晶性グラファイトは低比重、高熱伝導性に加えて加工性の良さを特長とし、音響特性に優れたスピーカの振動板として、また、ノートパソコン、携帯電話の放熱/熱拡散材料(図2)として実用化している。また、結晶性グラファイトは、99.9%以上の炭素で構成されるため対環境性、耐熱性にも優れ、ガス発生がなく、半導体製造装置や医療機器等、多方面での展開が期待されるなど電子機器・設備の高機能化をサポートし、生活の利便性向上と環境対策との両立に大きく貢献するものである。


図1 柔軟性のあるシートとその折鶴
図1 柔軟性のあるシートとその折鶴
図2 携帯電話への応用例(対策前後の熱分布)
図2 携帯電話への応用例(対策前後の熱分布)