市村産業賞

第42回 市村産業賞 功績賞 -02

高性能リチウムイオン電池を搭載した新世代電気自動車の実用化

技術開発者

三菱自動車工業株式会社 開発本部 EV・パワートレインシステム技術部
担当部長 吉田 裕明

技術開発者

同社  同本部  同部
担当部長 和田 憲一郎

技術開発者

同社 商品戦略本部 A&B-seg商品開発プロジェクト
プロジェクトマネージャー 岩男 明信

推  薦 社団法人 日本自動車工業会

開発業績の概要

 近年、地球温暖化の抑制と脱石油という両面から、石油由来ではない低炭素なエネルギーで走る自動車が求められており、このような次世代エネルギー車として、プラグインハイブリッド車、燃料電池車など種々が開発されている。その中でも電気自動車は走行中にCO2を発生しないことから、究極の環境対応車として期待されてきたが、電池の性能や耐久性の問題、重量増による動力性能不足などから、現在まで本格的な普及には至っていない。しかし、近年のリチウムイオン電池の性能向上やモーターの高性能化により、本格的な電気自動車の実用化と市場投入が可能となった。
 本技術開発では、駆動用バッテリーとして、熱安定性の高い正極活物質を採用したエネルギー密度の極めて高い大容量リチウムイオン電池を開発・採用した。これにより、実用上十分な一充電航続距離(160km:審査値)と、高い安全性、信頼性を実現している。充電方法としては、急速充電器又は、家庭用交流電源(100V,200V)での簡便な充電が可能である。駆動用モーターは、ネオジム磁石を使用した永久磁石式同期型モーターを採用し、ベースとなるガソリン車の約2倍の最大トルクを発生するとともに、最適化制御により、モーターとモーターコントロールユニット(MCU)からなるシステム総合効率を90%以上に高めている(図1)。また、車両統合制御システム(図2)として、車両統合制御ユニット(EV-ECU)へMCUを含む車両全体の情報を集約することにより、各コンポーネントへ動作を指示し、走行や充電などの車両制御とダイアグノシス及びフェイルセーフを統合して制御し、高い安全性、信頼性を実現した。
 本電気自動車では、大容量リチウムイオン電池を採用することにより、従来の電池では対応できなかった急速充電と実用上十分な航続距離を実現するとともに、小型高性能モーターの採用により、動力性能を大きく向上させ、高度な車両統合制御技術と合わせて、省エネを図りながら快適で安全・安心な走行を実現した。このようなCO2を含めた排出ガスを全く出さない"ゼロエミッション車"の本格的な量産と市場投入により、地球環境へのより一層の貢献が期待できる。

図1 最高出力特性(モーター&MCU)
図1 最高出力特性(モーター&MCU)
図2 車両統合制御システム
図2 車両統合制御システム