市村産業賞

第42回 市村産業賞 貢献賞 -03

マツダ アイドリングストップ技術

技術開発者

マツダ株式会社 プログラム開発推進本部
主査 猿渡 健一郎

技術開発者 同 社 パワートレイン開発本部 走行・環境性能開発部
主任 田賀 淳一
技術開発者 同 社 同本部 パワートレインシステム開発部
主任 水落 洋行
推  薦 社団法人 日本自動車工業会

開発業績の概要

 アイドリングストップ技術は、比較的低コストで実現でき、普及率の観点から高いCO2排出量削減効果が期待されている。しかしながら、これまでのアイドリングストップシステムは、エンジン再始動に時間を要し、さらにスタータ作動音や振動の課題もあり、AT車で広く普及するまでには至っていなかった。
 本技術開発では、迅速でスムーズな再始動を実現することがアイドリングストップ技術普及の鍵を握ると考え、直噴エンジンのメリットを活かし、シンプルかつ効率的に再始動する方法として、エンジン内部に燃料を直接噴射し爆発させる「燃焼始動式」を採用した。具体的には、

(1) エンジン停止過程でオルタネータ負荷とスロットル開度を緻密に制御することで、ピストン停止位置と燃焼室内空気量を最適制御し、エンジン再始動時に適切な燃焼力を発生させ、
(2) エンジン再始動前に、再始動気筒を判別し、ピストン停止状態から燃料を噴射・点火し、エンジンを再始動させている。
 また、消費電力の抑制や、直噴エンジンベースによるシンプルな構造(図1)を実現し、AT車で違和感のない技術とした。
 燃焼力を主に再始動する本開発技術(i-stop)により、特に始動要件の厳しいAT車においても、エンジン再始動時間が従来比半分の0.35秒(図2)と、エンジン停止・始動時の振動/騒音抑制で、ドライバーに自然なエンジン再始動の提供を可能にした。また、Cクラス乗用車で約10%の燃費改善(国内10・15モード)も達成した。これは、特に渋滞の多い都市部で、より大きな実用燃費改善が期待できる。今後、直噴エンジン乗用車へのi-stop装着が主流になることで、ドライバーに「走る歓び」を提供するとともに、環境面で社会への貢献が期待できる。
図1 i-stop構造(ベースエンジン: MZR 2.0L DISI)
図1 i-stop構造(ベースエンジン: MZR 2.0L DISI)
図2 燃焼始動式によるエンジン再始動
図2 燃焼始動式によるエンジン再始動