市村産業賞

第43回 市村産業賞 功績賞 -02

造影剤を用いずに血管を良好に描出できるMRI装置

技術開発者

東芝メディカルシステムズ株式会社
技 監    宮崎 美津恵

技術開発者

同社 MRI事業部 MRI開発部
主幹 杉浦  聡

技術開発者

同社 同事業部 同開発部
グループ長 葛西 由守

開発業績の概要

 高齢化や食生活の欧米化による糖尿病や高血圧等の増加に伴い起こる、脳の血管障害や手足の血管が詰まる狭窄や閉塞などの血管系疾患とそれによる死亡率は全世界で増加の一途を辿っている。疾患の位置や程度を早期に突き止めるための画像診断が治療には不可欠である。この検査としては、造影剤を注射しX線撮影する血管造影が主流であったが放射線被ばく、造影剤使用等の負担を患者に与える。MRI装置での血管検査(MRA)では、放射線被ばくはないもののX線検査同様、造影剤を用いる手法が主流であった。従来の造影剤を用いないMRAは血管描出能が悪く、脳動脈など一部の部位にしか適用できなかったのがその理由である。
 受賞者らは「患者の負担が少なく、高描出能の血管検査を」とのニーズに応え、血液そのものを信号源として活用する「新たなコンセプトの“非造影MRA撮像法”」の開発に成功し、更に「疾患別に必要な血管のみを描出させる技術」を備えたMRI装置を世界で初めて商品化した。更にこれを「脳脊髄液などの血管以外の対象物の描出化技術」、「血液の流れを動態として可視化する技術」等の臨床適用技術へと発展させることで、非造影MRA技術の臨床応用範囲を拡大し、併せて、医師らと共同で発表を多数行い医療現場への啓蒙・普及に努めた。
 本開発技術により、造影剤注射による苦痛、造影剤による副作用リスク、造影検査用同意書への署名等、造影血管検査での患者への身体/精神面の負担を軽減しただけでなく、造影剤投与ができなかった小児等の患者が血管検査を受診できるようになった。非造影MRAは社会的に大きな関心を集め、今やMRI装置のスタンダード機能になり、世界MRI市場の96.5%を占めるメーカーが本技術を使用している。

図1
図2