市村産業賞

第43回 市村産業賞 貢献賞 -05

新型ハイブリッド車に搭載されたパワー半導体用冷却器の開発

技術開発者 株式会社 豊田自動織機
専務取締役 関森 俊幸
技術開発者 株式会社 豊田自動織機 エレクトロニクス事業部
技術部長 大年 浩太
技術開発者 昭和電工株式会社 アルミニウム事業部門
技術顧問 柳本  茂

開発業績の概要

 近年、地球温暖化の観点から低燃費化はさらに強化される傾向にあり、ハイブリッド車の市場は、今後、広がっていくと考えられる。しかしながらハイブリッド車は、通常のガソリン車に加えて、モータやPCU(パワーコントロールユニット)、電池などのユニットが追加で搭載されており、重量は重く、居住スペースは狭く、価格は高くなっているのが現状である。中でもハイブリッドシステムの心臓部であるPCU部品であるパワー半導体冷却器は、冷却性能向上と小型・軽量化が強く望まれていた。
 受賞者らは、「冷却器構造の簡素化と熱抵抗低減による冷却性能向上によりパワー半導体素子を小型化してPCUコストを低減する」というコンセプトで開発に取り組み、冷却性を阻害するシリコーングリス廃止による大幅な熱抵抗低減と、高価な銅モリブデンヒートスプレッダ廃止と第二ハンダ工程削減によるコスト低減可能な構造を考案した。この構造を実現するため、アルミ圧延材を主とした各種成形体とセラミック絶縁基板とを真空ろう付法により一括で成型する技術を開発した。その結果、セラミック絶縁基板上に搭載したパワー半導体が発する熱を直接冷却する、世界初の「直冷式冷却器」を実現した。
 「直冷式冷却器」の大きな技術課題は、アルミニウムとセラミックとの線膨張率の差から生じるろう付後の熱歪によって、セラミック絶縁基板が剥れたり、冷却器が反ることであった。これらの課題を、接合部にアルミパンチングメタルを挟む独創的な構造設計とろう付け後の形状をコントロールすることによって解決した。さらに冷却水の流路形状を工夫して全体に均一な分流をはかり、薄型ながら低い通水抵抗を実現した。本開発品は、従来品に比べ熱抵抗は2/3に低減し、冷却器のサイズは1/3、重量は1/5、コストは半減と非常に高いパフォーマンスを達成している。
 本開発品により、PCUの小型化(第2世代に対し約40%低減)に貢献し、2009年5月に発売されたトヨタ自動車(株)の第3世代プリウスに採用された。また、この技術は大幅な成長が予想されるハイブリッド車や電気自動車の市場拡大・普及へと、今後とも大きく寄与するものと期待される。

図1
図2