市村産業賞

第46回 市村産業賞 貢献賞 -02

鉄道車両の振動制御装置アクティブサスペンション

技術開発者 新日鐵住金株式会社 技術開発本部 鉄鋼研究所 交通産機品研究部
主幹研究員  石原 広一郎
技術開発者 同 社 交通産機品事業部 鉄道台車製造部
部  長  小泉 智志
技術開発者 同 社 同事業部 同 部 第一台車設計室
主  幹  後藤  修
推  薦 一般社団法人 日本鉄鋼協会

開発業績の概要

 近年、新幹線をはじめとする鉄道車両の高速化が図られているが、速度の向上に応じて揺れが増加するので、乗り心地向上への強いニーズがあった。そこで車体の揺れを小さくするため、外部エネルギーを注入し、アクチュエータで車体の揺れを打ち消す制御を積極的に行い、従来のシステムに比べ飛躍的に良好な乗り心地を実現するアクティブサスペンション装置を開発した(図1)。
 本装置は車体の振動加速度をセンシングして、車体と台車間に設置したアクチュエータで車体の振動を抑える(図2)。編成内の最後尾車の識別や、走行中のトンネル、曲線といった地点を検知して、鉄道に特有なさまざまな振動に対し、最適な制御設計データをリアルタイムに選択して効率的に車体の揺れを抑える特徴がある。車体の揺れを振動加速度で制御が無い場合の1/2〜1/3に小さく抑えることが可能となり(図3)、乗り心地評価レベルを「非常に良い」にすることができる(図4)。
 弊社は本装置を世界で初めて実用化し、新幹線や在来線の多くの路線への供給実績があり、現在まで世界唯一のメーカである。最近、300km/h超の新幹線や豪華サービス列車に採用され、我国の固有の技術として鉄道技術の向上に貢献している。乗客の皆様に疲労感の少ない移動や豪華な観光旅行を提供できることで、今後、ますます広く普及することが期待できる。

図1

図2

図3

図4