市村産業賞

第46回 市村産業賞 貢献賞 -03

アイドリングストップ車用の高効率・高耐久鉛電池開発と実用化

技術開発者 株式会社GSユアサ グローバル技術統括本部 自動車電池技術部
部  長  大前 孝夫
技術開発者 同 社 同本部 同 部
グループマネージャー  細川 正明
技術開発者 同 社 同本部 技術開発本部 第三開発部
担当課長  坪井 裕一

開発業績の概要

 自動車の燃費性能を向上させCO2排出量を抑制できるアイドリングストップ車(IS車)の開発・普及が世界的に進められている。IS車は、信号待ちや渋滞等の停車中にエンジンを停止させて燃費を向上しているため、エンジン停止中の車両電装機器への電力供給及びエンジン再始動時の電力供給の大部分を鉛電池から行う必要がある。また、電池から持ち出された電力は車両減速時の回生エネルギーを利用して充電(回生充電)され、エンジン出力を用いた発電による充電を極力制限することで、更に燃費を向上している。そのため、IS車に搭載される鉛電池には、放電負荷増大に対する「耐久性能」と、放電した電力を短時間の充電で回復する「回生充電受入性能」を向上させて、IS車特有の過酷な使用環境に適応できる高効率で高い耐久性能を実現することが望まれていた。
 IS車用鉛電池に求められる高い「耐久性能」と「回生充電受入性能」を実現するため、『(1)正極活物質の高密度化・劣化抑制添加剤技術』、『(2)負極耳部の耐食性合金表面被覆処理』、『(3)負極活物質のカーボン添加技術』、『(4)電解液への新規添加剤技術』を開発し、当社従来比で、IS車用途を模擬した耐久性能を4.2倍に、短時間の充電を模擬した回生充電受入性能を3倍に向上したIS車用鉛電池を実現した(図1、図2)。また、開発したIS車用鉛電池は、従来電池用部材の流用と既存生産設備の小改造によって生産できることから、国内のみならず、海外工場においても短期間で生産を立ち上げることを可能としている。
 IS車の実現と普及促進に必要な、厳しい使用条件下でも高い耐久性を有する鉛電池が実用化でき、既に多くの自動車メーカーのIS車に採用されている。今回開発した技術は、IS車の普及を通して車社会全体でのCO2削減に大きく寄与することができた。今後も国内外でのIS車の需要は大きくなると考えられ、更なる地球環境保護への寄与が期待できる。


図1

図2