市村産業賞

第46回 市村産業賞 貢献賞 -04

ストレージの仮想化技術の研究開発と実用化

技術開発者 株式会社 日立製作所 研究開発グループ
技 師 長  山本  彰
技術開発者 同 社 ITプラットフォーム事業本部
技 師 長  本間 繁雄
技術開発者 株式会社 日立システムズ
代表取締役社長   煖エ 直也

開発業績の概要

 情報化社会の到来により、指数関数的に増大しているデータを安全かつ効率的に格納するストレージが、現代社会を支えている。ストレージのコストの約60%は、Hard Disk Driveなどの記憶媒体が占めるため、記憶媒体のコスト削減が重要な課題となっていた。受賞者らは、この課題を解決するため、複雑な実際の構成を扱い易く見せる仮想化技術に着目し、10年余に亘る開発の結果、以下に示す3段階のストレージの仮想化技術を世界で初めて完成させた。本技術により、試算では顧客の記憶媒体購入コストを1/10に削減できる。
(1)ストレージ・ボリューム*の仮想化:既存の複数のストレージのボリュームを、一台のストレージのボリュームとして仮想化する。本技術により、従来廃棄していた既存ストレージの記憶媒体の有効活用が可能となり、試算では記憶媒体購入コストを1/3に削減できる。[1997‐2004年]
(2)ボリューム容量の仮想化:従来、システム設計時には、将来のボリューム需要を見越して大きめの容量の記憶媒体を購入していたので、初期導入コスト高の要因となっていた。本技術により、データを格納した領域のみ記憶媒体を割当てることができるので、実需に応じた記憶媒体の購入が可能となる。試算では記憶媒体初期購入コストを1/2に削減できる。[2001‐2007年]
(3)記憶階層の仮想化:価格・性能が異なる記憶媒体に対して、自動的に最適な記憶媒体に割当てる。本技術により、安価・低速な記憶媒体の有効活用が可能となり、試算では記憶媒体購入コストを3/5に削減できる。[2004‐2010年]
本技術は、世界のエンタープライズストレージの90%以上の製品で採用され、ビッグデータ時代と呼ばれる今日の社会に大きく貢献している。
*ボリューム:データを格納する入れ物


図1