市村産業賞

第47回 市村産業賞 功績賞 -02

超高速・低消費電力ハードウェア通信プロトコル処理技術の開発

技術開発者 株式会社 東芝 セミコンダクタ&ストレージ社
ストレージプロダクツ事業部 ストレージソリューション推進部
参事 田中 信吾
技術開発者 同社 研究開発センター ネットワークシステムラボラトリー
研究主務 山浦 隆博
技術開発者 同社 同センター 同ラボラトリー
研究主務 山口 健作
推  薦 一般社団法人 電気通信協会

開発業績の概要

 来たる情報爆発時代では通信量の爆発的な増加が見込まれ、通信処理の高速化が必須である。一方、データセンターでは地球環境やランニングコストの観点から高い省電力性が求められ、モバイル端末でもバッテリ容量を有効利用するため省電力性能が求められる。ストレージについてはフラッシュメモリにより高速・省電力化が実現されたが、通信処理については依然として処理効率に課題が残っていた。
 そこで通信処理の抜本的な効率改善のため、ハードウェア処理を効果的に取り入れた通信プロトコル処理技術NPEngine TMを開発した。すなわち、通信処理の大半はデータパケットであることに着目し、ソフトウェアによる複雑な通信手続き処理とハードウェアによる高速なデータ転送処理を効率よく両立させるハイブリッド処理技術を開発した。さらに、フラッシュメモリ等のストレージ上のファイルデータをネットワークに転送する処理において、既存のアプリケーションやファイルシステム技術を活用しつつ、一連のデータ転送処理を完全パイプライン化したハードウェア処理によって実現し、データ転送の処理効率を最大化するダイレクトストレージアクセス技術を開発した(図1)。本技術により、従来の組み込みCPU と同じ消費電力で20 倍以上の伝送レートを実現、ビデオ配信サーバに適用した場合にシステム全体の消費電力を半減させることに成功した。さらに本技術をデータベースに応用した場合、フラッシュメモリを用いたデータベースでDRAMを用いたインメモリデータベースとほぼ同等のクエリ応答性能を実現した。
 本技術は当社の放送局向けフラッシュメモリベースビデオ送出サーバVIDEOS neo TMに適用された。特に主流となりつつあるファイルベースに対応した放送システムの置き換えに貢献し、キー局を始め多くの地方局やケーブルテレビ局で運用されている。今後はビッグデータ解析やリアルタイム分析で大幅な伸長が見込まれるインメモリデータベース市場等において、本技術によってDRAM からフラッシュメモリへの置き換えの促進、システム全体の省電力化、低コスト化への貢献が期待される(図2)。

図1


図2