市村産業賞

第47回 市村産業賞 貢献賞 -05

アモルファス/単結晶シリコンヘテロ接合太陽電池の開発と実用化

技術開発者 パナソニック株式会社 エコソリューションズ社
ソーラービジネスユニット 技術開発グループ
グループマネージャー 岡本 真吾
技術開発者 同社 同ビジネスユニット 同グループ
総括参事 田口 幹朗
技術開発者 同社 同ビジネスユニット 同グループ
参事 角村 泰史

開発業績の概要

 1973年のオイルショックを契機に代替エネルギーとして太陽電池への期待が否応無しに高まったが、当初は変換効率が低くエネルギー源としての応用には高出力化が必須であった。資源面で有望視されていた結晶シリコン(Si)太陽電池では、微細加工などのLSI 技術を駆使することで高効率化が図られたが、価格面で実用化には程遠く、高い変換効率を量産可能な構造とプロセスで実現することが最大の課題であった。
 受賞者らは、結晶Si 太陽電池の出力阻害要因が結晶表面のSi 未結合手であることに着目し、アモルファスシリコン(a-Si)/単結晶シリコン(c-Si)ヘテロ接合にi 型a-Si を挿入した新構造太陽電池を世界に先駆けて開発、1997年には太陽電池パネルHIT*として実用化した。本太陽電池は従来の結晶Si 太陽電池の常識を覆す0.7V を超える素子開放電圧(Voc)を持ち、高い変換効率を実現するだけでなく、温度特性にも優れるので夏場の高温下でも大きな発電量が得られる特長を有する。更に入射光の有効活用などパネルの高出力化技術を確立し、2011年には世界最高の実発電量を有する太陽電池パネルの製品化に成功した。
 本技術を用いた太陽電池パネルHIT*は、狭い日本の屋根でも大きな発電量を長期間にわたり供給できる特長により、一般家庭への太陽光発電システムの普及に大きく貢献した。学術面では、a-Si/c-Si ヘテロ接合太陽電池が一つの技術分野として定着し、更に2014年4月には研究開発レベルでSi 太陽電池の変換効率世界記録を15年ぶりに更新するなど、日本発の優れた技術として世界で広く認知されている。高出力でコンパクトなシステム構築が可能な本技術は、ゼロエネルギー住宅(ZEH)・ビル(ZEB)などへの展開に加え、災害時の非常用、非電化地域における医療用・教育用など人々の暮らしを支える独立電源用途への展開も期待され、今後とも世界中の人々への安心で快適な暮らしの提供に貢献していく。

*「HIT」は、パナソニックグループの登録商標です

図1

図2