市村産業賞

第48回 市村産業賞 功績賞 -01

3.3kV フルSiC 適用鉄道車両用推進制御装置

技術開発者 三菱電機株式会社 先端技術総合研究所 パワーエレクトロニクス技術部門
主管技師長 大井 健史
技術開発者 同社 伊丹製作所 車両システム部
次長 田中 毅
技術開発者 同社 パワーデバイス製作所 パワーデバイス第一部
次長 山口 博史

開発業績の概要

 Si パワーデバイスの性能改善はこれまで、電力変換器の高効率化、小型化に大きく貢献してきた。しかし性能改善は限界に近付きつつあり、SiC パワーデバイスが期待されている。三菱電機はこれまで、SiC-MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)及びSiC-SBD(Schottky Barrier Diode)とその応用機器の開発を進めてきた。鉄道用途では、1.7kV 耐圧のSiC-SBD とSi-IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)からなるハイブリッドSiC を適用した鉄道車両用インバーターを製品化している。SiC-MOSFET を適用したフルSiC は電力損失低減効果が大きく、省エネと小型軽量化要求が強い鉄道用途において、3.3kV フルSiC を適用した鉄道車両用推進制御装置の実現が切望されていた。
 本開発では、3.3kV フルSiC モジュールを鉄道車両用推進制御装置に世界で初めて適用し、大幅な省エネと装置の小型化実現した※1。開発技術の概要を下記に示す。
(1) 直流1500V 架線対応の3.3kV フルSiC モジュール適用インバーター装置を開発し、インバーター損失を約55%低減、装置体積・重量を約65%低減(当社製Si モジュール適用製品比)。
(2) 3.3kVフルSiCモジュールを適用した鉄道車両用推進制御装置を開発し、国内の鉄道車両に搭載され、約4か月の省エネ効果の検証の結果、主回路システム全体として従来比の約40%の省エネ効果を実証。
 また、本開発技術を適用した交流架線対応の主変換装置に主電動機を組み合わせた主回路システムを開発し、高速鉄道での試験走行を開始した。その他、国内主要各社車両への搭載が予定されており、SiC適用範囲は拡大している。
 今後鉄道分野に限らず、民生、産業、自動車、電力など広範な分野へのSiC適用機器の開発が加速され、SiC適用機器の普及拡大による、地球規模での省エネへの貢献が期待される。
※1:本研究の一部は、経済産業省及び国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託を受けて実施しました。


図1