市村産業賞

第48回 市村産業賞 功績賞 -02

高速高画質プリンタを実現する2次元面発光レーザアレイの開発

技術開発者 富士ゼロックス株式会社 モノ作り技術本部 電子デバイス技術部
グループ長 中山 秀生
技術開発者 同社 同本部 同部
チーム長 村上 朱実
技術開発者 東京工業大学 精密工学研究所
教授 小山 二三夫

開発業績の概要

 オフィスや家庭用に電子写真式複写機・プリンタは広く普及しており、ドキュメントの可視化になくてはならないものとなっている。なかでも1インチあたり2400ドットを書き込む2400dpi(dot per inch)の高画質プリンタは、オフセット印刷並みの画質を最速毎分137枚(当社機)のスピードで提供するものであり、オフィスからプロダクション市場まで、高画質が要求される領域へ幅広く導入されている。現在、当社含め国内三社が高画質プリンタを全世界へ提供しているが、このプリンタの実現には、高密度で多数のレーザビームを2次元配置できる面発光レーザが必須であった。
 受賞者らは、1995年よりプリンタ用面発光レーザの研究開発に着手し、8x4 のマトリクスに並べた2次元面発光レーザアレイの実現に取り組み、当時の課題であった、「基本横モード発振する光出力の向上」を解決した。さらに、面発光レーザの性能を左右する酸化炉での酸化アパーチャ径形成工程中に、反射スペクトルを観測する「酸化アパーチャ径のその場観察技術」を構築した。
 本技術により、極小のアパーチャ径を持った単一モード面発光レーザの安定生産を可能にし、2003年に世界に先駆けて、高速高画質プリンタを実現する2次元面発光レーザアレイの開発に成功した。本技術開発が契機となり、国内レーザプリンタメーカーにおける面発光レーザ搭載の高精細プリンタ開発を誘発し、我が国が高速高画質プリンタ市場を独占するに至っている。面発光レーザは、東京工業大学伊賀健一名誉教授が考案された日本発の半導体レーザ技術だが、長らく単一素子の光トランシーバ等に搭載される応用が中心であった。これに対し、面発光レーザの最大の特徴である2次元アレイを活かした製品応用を初めて実現したことで、日本発の独創技術である面発光レーザの革新性を世界にアピールすることができたと自負している。

図1