タイヤ気柱共鳴音は自動車のタイヤ内部空洞で発生する共鳴が車体に伝わり乗員に認知される車室内騒音の一つである。従来の下流対策では大きな重量増を伴いかつ抜本的な解決が困難であるため、長年ロードノイズ主要課題の一つであった。受賞者らは軽量で聴感上認知できないレベルまで抜本的な低減が可能なホイール装着ヘルムホルツレゾネータ(単室式)を世界初の技術として2010年に独自開発し量産化を実現した。
近年タイヤ気柱共鳴音デバイスがいくつか商品化されるようになり、これらのデバイス技術は静粛性と車体軽量化の両立を可能にするため、適用車種の拡大を図ることで環境対応への貢献が期待されていた。しかしながらコスト制約からデバイス適用は一部のタイヤや高級車種に限定され普及が進んでいないのが実情であり、さらなる技術進化によるコスト低減が望まれていた。
そこで、受賞者らは重量およびコストを単室式から大幅に削減する複室式レゾネータを新開発し、2015年に量産化を図り中級車種への適用拡大を実現した(図1)。技術進化の内容としては、転動タイヤ音場におけるレゾネータ個数および配置の最適化理論(図2)により2室一体成形の複室式レゾネータを新設計し、部品点数と組付け点数の削減により単室式から50%以上のコストと重量の低減を図った。
本開発技術の特徴を以下に示す。
(1) 基本構造としてはホイールリムのウェル部に取付け溝を新設し、別体の軽量樹脂製レゾネータを固定する手法
(2) 樹脂製レゾネータの製法は気密性が高く生産コストも低いブロー成形
(3) 通常のホイールリム製造工程で生産可能なレゾネータ取付け溝形状
(4) レゾネータ組付けは組付け部品を必要とせず瞬時組付けが可能なかん合方式本開発技術は様々な路面・車速走行において、従来達成困難であった乗員が聴感上認知しにくい音圧レベルである約10dB の低減を実現しており、今後の適用車種の増加により環境対応への貢献も期待できる。
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