市村産業賞

第48回 市村産業賞 貢献賞 -04

高温超伝導体を利用した世界初の超1GHz NMR 装置の開発

技術開発者 株式会社 神戸製鋼所 技術開発本部 電子技術研究所 超電導研究室
室長 斉藤 一功
技術開発者 国立研究開発法人 物質・材料研究機構 中核機能部門強磁場ステーション
ステーション長 清水 禎
技術開発者 国立研究開発法人 理化学研究所 ライフサイエンス技術基盤研究センター
上級研究員 高橋 雅人
推  薦 公益社団法人 低温工学・超電導学会

開発業績の概要

  NMR(核磁気共鳴)装置はタンパク質などの生体高分子の立体構造解析、有機化学や材料研究など広い分野で使用されており、新薬創製等に不可欠な分析装置の一つである。薬剤や工業材料の開発を加速するには高分解能NMR装置の性能向上が重要であり、共鳴周波数をより高くするためには高い磁場を発生する超伝導磁石の開発が必要である。NMR装置においては磁場強度が重要な指標の一つとなっており、磁場1000MHz(23.5T)を超えるための熾烈な開発競争が行われてきた。
 これらNMR 装置の開発においては、従来の超伝導磁石では材料の特性により1000MHz が発生限界となっていた。本開発では高温超伝導体を用いることで、この限界を超えることができた。高温超伝導体を用いた磁石の開発技術は以下の3点である。
(1)巻線技術:脆性な高温超伝導体を用いたNMR磁石を実現するため、特殊な巻線技術を開発した。(2)磁場安定化技術:高温超伝導体を用いた超伝導磁石においてもNMRに必要な安定磁場が得られる特別な磁場安定化装置を開発した。(3)磁場均一化技術:磁場が空間的に不均一だと測定できないため、超伝導磁石が作りだす不均一な磁場を補正して均一にする必要があり、鉄片を使った磁場補正装置を新たに開発した。
 本開発では高温超伝導体を用いた世界初のNMR磁石/装置を開発し、世界最高磁場1020MHz(24.0T)での高分解能NMR測定に成功した。本技術はNMR装置の性能向上を進める上で必須の技術で、今後のNMR分析技術の発展に大きく寄与すると期待される。たとえば、生体高分子の構造解析による新薬の開発、固体対象の構造解析では新たな高機能材料の利用、更には電池材料やナノ材料等の機能性材料の開発に大きく貢献すると考えられる。
謝辞;本開発は以下の皆様の協力により達成されました。
 (株)JEOL RESONANCE、ジャパン スーパーコンダクタ テクノロジー(株)、住友電気工業(株)、科学技術振興機構。

図1