1.開発の背景
世界の成人11人に1人(約4億人)が糖尿病を発症し、各国の健康寿命や医療経済に深刻な影を落としている。そのおよそ9割を占める2型糖尿病既存薬は、主にインスリンの働きを介して血糖降下を発揮する為、重篤な副作用や長期服用時の効果減弱、糖尿病による合併症を予防できない等の問題を抱え、新薬が強く望まれていた。そこで、既存のインスリンとは全く異なる作用機序を持つ糖尿病治療薬の開発に取り組んだ。
2.開発技術の概要
糖尿病の主症状の尿に糖が漏れる状態に着目し、腎臓(尿細管)で糖の再吸収を担う生体分子を阻害して、あえて見かけ上の症状(糖尿)を悪化させて高血糖を是正するという当時の常識を覆す発想で、世界初の経口SGLT(sodium glucose cotransporter2)阻害薬T-1095の創製に成功。さらに安全で飲みやすく、効果の優れたカナグリフロジン薬物治療技術の開発に成功し、世界最大の医薬品市場の米国で新規メカニズム医薬品(First in class)として製品化に成功した。現在までに80か国以上の国で承認され、各国の糖尿病治療の最良、最善な治療技術として様々な治療ガイドラインに組み込まれている。
3.開発技術の特徴と効果
一日一回の服用で、長期間にわたって高血糖を下げ、さらに糖尿病でしばしば問題となる過体重や高血圧に対しても低下作用を持ち、その薬物治療技術は心血管系合併症や透析を含む腎機能障害の発症リスクを減らす効果も報告されるなど、既存薬にはなかった優れた性能を発揮している。現在もなお、臨床試験による新たな効果証明に精力的を進め、「カナグリフロジンによるより高度な薬物治療技術の確立」を目指した取り組みにより、医療の発展と世界の健康寿命の伸長に貢献している。
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