市村産業賞

第51回 市村産業賞 貢献賞 -03

タッチパネル用感光性導電ペーストの開発

技術開発者 東レ株式会社 アプライドペースト技術部 デバイス材料技術課
主任部員 水口 創
技術開発者 同社 同技術部 同技術課
主任部員 近藤 篤司
技術開発者 同社 同技術部 同技術課
課員 寺本 賢志
推  薦 一般社団法人 日本化学工業協会

開発業績の概要

1.開発の背景
 2010年以降スマートフォンやタブレットなどの情報機器端末の拡大に伴い、画面比率が高くデザイン性に優れた端末を安価に製造したいという顧客要求が高まっていた。
 画面比率を高めるためにはタッチパネルの額縁エリア(非表示部)に形成される周囲配線の1本あたりの配線幅を微細にする必要がある。開発当初フィルム型タッチパネルの配線幅はスクリーン印刷により形成され100μmと太く、同方法では量産性を保ちながら更なる微細化は困難な状況であった。

2.開発技術の概要
 本業績はPETフィルムなどの耐熱性の低い基板上に幅10〜30μmの微細配線を形成する感光性硬化型導電ペーストに関する技術である。本製品は特殊な感光性樹脂溶液中に導電粒子を分散、複合化させたペースト製品となり、感光性樹脂の持つフォトリソグラフィー加工性(フォトマスクを介してUV露光した後、現像液で未露光部を除去)を生かし、基板上に微細配線パターンを形成した後、基板を130〜140℃と比較的低温で加熱することで形成した配線に導電性が発現するといった特長を有する。

3.開発技術の特徴と効果
 微細配線を形成するためのフォトリソ加工性と、形成されたパターンに導電性を発現させる特性にはトレードオフ関係が存在する。本課題に対して、(1)樹脂成分の硬化収縮制御技術(2)粒子間に金属結合を形成させる粒子表面制御技術を導入することでトレードオフ関係を解消し、本技術の開発に成功した。また、本技術で形成した配線はフレキシブル性が高いという特徴を有し、年間2億台以上のモバイル端末に搭載されている。


図1

図2