市村産業賞

第52回 市村産業賞 本賞 -01

二次元コードの開発と進化

事業経営者 株式会社 デンソーウェーブ
代表取締役社長 中川 弘靖
技術開発者 同社 AUTO-ID事業部
主席技師 原 昌宏
技術開発者 同社 開発部
主任 渡部 元秋

開発業績の概要

1.開発の背景
 QRコードの開発を開始したのは1992年。その当時、印刷媒体による情報システムへの正確、迅速、安価な入力手段として、バーコードが広く利用されていた。しかし、高度化する情報化時代に必要な情報の多様化、大容量化と製品の品質向上のために部品レベルまで管理したい要望を実現する高密度印字のニーズに対応する為には、バーコードでは限界であった。そこで、次世代のコードとしてQRコードを開発した。

2.開発技術の概要
 QRコードは、囲碁のように格子状に白・黒のセルを配置して情報を表現する。2次元的に情報を表現できるので大容量の情報を高密度で記録できる。しかし、バーコードよりも構造が複雑で、多くの情報を扱うことから高速かつ正確に読取れない課題があった。そこで、データ領域以外に読取りを支援する機能パターンとコードが汚れ・破損しても確実な読取りを実現する誤り訂正符号で構成し、読取り性能に拘ったコードを開発した。

3.開発技術の特徴と効果
 QRコードは2次元コードの特長である大容量、高密度記録の他に、高速読取りができ、汚れ・破損・歪のあるコードでも正確に読取れる。QRコードの格納できる情報量は、数字7,089桁、漢字1,817文字であり、また16個のコードを連結する機能があり、最大で約45Kbyteのデータが扱える。さらに誤り訂正符号搭載により、コード面積の最大30%が汚れ・破損しても読取れる。QRコードの最大の特長である高速読取りに関しては、ファインダーパターン(FP)をコードの3隅に配置した事により、数字100桁のコードを16msで読取れ、バーコードの約5倍の情報をバーコードと同等の時間で読取れる。このFPは、文字や図形が構成する白黒比率で出現頻度が極端に少ない比率の1:1:3:1:1があらゆる角度に回転しても出現する構成になっている。これにより、文字や図形などがある画像の中から瞬時にコードだけを検出でき高速に読取りができる。QRコードは読取り性能が優れている事から色々な用途で使用され、中国ではQR決済だけで1日に約15億個(2016年)が発行され、世界で一番使用されている。

図1
図2