1.開発の背景
トラック、バス等の大型車両では、長い下り坂における速度超過を防止するために必要なブレーキ力が不足する場合があり、補助ブレーキ装置である「リターダ」のニーズがあった。しかし、従来の海外製リターダは装置寸法・重量や車両搭載性等に問題があり、日本ではほとんど使用されていなかった。そこで受賞者は、これらの問題を解決する新しいリターダを開発し、それを普及させることによって大型車両の安全性を向上することを目指した。
2.開発技術の概要
強力なネオジム系永久磁石に着眼し、その磁力を活用した小型・軽量、メンテナンスフリーの永久磁石式リターダ(図1 (a))を世界で初めて開発した。この初期型の実用化以降も、社会やユーザニーズの高まりに応える技術開発を継続し、革新的に性能を向上した最新型の高効率型永久磁石式リターダ(図1 (b))を実用化し、搭載車両数を大きく増加させた。
3.開発技術の特徴と効果
初期型では、永久磁石をローター内外に往復移動させる機構により、ブレーキON/OFF切替えを実現した。永久磁石式リターダは他方式(流体式、電磁石式)に比べて大幅に小型・軽量であり、搭載のための車両改造もわずかである。リターダにより下り坂での速度超過を抑制できるとともに停止距離が短縮されるため、車両の衝突防止に貢献した。さらに、フットブレーキ使用回数が大幅に減少するため、ドライバーの疲労軽減を通じても安全性向上に貢献した。 最新型では、永久磁石をローター内部で円周方向に往復移動させる機構を開発して構造の簡易化を図り、磁気回路最適化によってブレーキ力を最大化したことで装置重量あたりのブレーキ力を初期型の2倍以上に高めた。さらに、新たにモジュール設計を採用して機種選択を容易にした(図2)。このように搭載性を大幅に高めた結果、永久磁石式リターダの販売台数は大幅に増加して累計30万台を超え、リターダによる社会貢献度が拡大した。
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