市村産業賞

第53回 市村産業賞 貢献賞 -02

自動車の進化を支える超高強度鋼板加工技術の開発

技術開発者 日本製鉄株式会社 名古屋製鉄所 品質管理部
室長 田中 康治
技術開発者 同社 同製鉄所 同部
主幹 宮城 隆司
技術開発者 同社 技術開発本部 鉄鋼研究所 材料ソリューション研究部
主幹研究員 西村 隆一
推  薦 一般社団法人 日本鉄鋼協会

開発業績の概要

1.開発の背景
 自動車に求められている安全性向上のための車体高強度化とCO2排出量削減のための軽量化を両立するためには、車体へより高強度な鋼板を適用することが有効である。日本製鉄では世界に先駆けて超高強度鋼板(強度780MPa〜1470MPa)を開発したが、鋼板は強度が高いほどプレス成形性が低下して自動車部品に加工することが困難となる。このような先進材料を活かすための加工技術の開発に取り組んだ。

2.開発技術の概要
 車体部品の多くは端部にL字・T字状の湾曲や連続的なフランジを持つ複雑形状であるため、従来のプレス技術では超高強度鋼板を加工することが困難であった。これに対し、コンピュータシミュレーションを駆使して、プレス成形時の材料変形を最適に制御するプレス加工技術「自由曲げ工法」と「フランジ連続化工法」を開発し、それらを実現するための金型装置を開発した。開発技術は加工時の材料変形量を従来の50%以下に低減する画期的な工法で、超高強度鋼板を複雑な形状の部品へ加工することを可能にした。

3.開発技術の特徴と効果
 開発技術により、①従来の2倍以上の強度を持つ超高強度鋼板を適用して車体の軽量化と高強度化を実現し、②プレス加工後に切り捨てられる余肉を減らすことにより鋼板使用量を大幅に低減した。開発技術は1000万台以上の自動車に適用され、9,400ton/年の鋼材使用量削減と42,300ton/年のCO2排出量削減に貢献している。
※日本鉄鋼協会データより算出


図1

図2