1. 開発の背景
ウシオ電機は1992年に世界で初めてエキシマランプの開発と実用化を達成した。一方、2013年にコロンビア大学のデイビッド・ブレナー博士らは光学フィルタ付きエキシマランプの200 - 230nmの紫外線が人組織を損傷せず、殺菌能力を有すると報告した。それを受け、2015年にウシオ電機は同大学と独占ライセンス契約および、研究委託契約を締結し、環境衛生・医療分野で数多く使われることを目標に有人環境でも使用可能な波長222nmのウイルス抑制・除菌用紫外線照射技術「Care222®」を開発した。
2. 開発技術の概要
従来のKrClからなるエキシマ発光は光変換効率が低く、電気入力を上げることで照射量を補っていた。そこで低消費電力での使用を可能にするため、光学的に光を効率良く取り出すべくランプ光源と光学系を適切に配置するとともに波長222nm近傍の安全な光だけを取り出す光学バンドパスフィルタも開発し、これらをパッケージ化することで小型・低消費電力の光源モジュールを完成させた。また、ウシオ電機は光学フィルタ付きKrClエキシマランプを用いた紫外線照射装置を開発し、Care222®技術の安全性と効果を多くの大学・研究機関と共に実証した。
3. 開発技術の特徴と効果
Care222®は一般的な紫外線除菌技術(例えば低圧水銀ランプの254nm)と異なり、有人環境でも使用できることが最大の特徴である。理由は波長222nmが254nmと比較し、ウイルス不活化や殺菌の効果は同程度でありながら、タンパク質の吸収係数が高く、人では皮膚表面の死細胞である角質層(垢)で吸収され、皮膚奥の生細胞を傷つけないことによる。Care222®は有人環境の空間と表面を安全かつ効果的にウイルス抑制・除菌ができる唯一の紫外線照射技術として、今後様々な場面での利用が期待される。
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