市村産業賞

第54回 市村産業賞 功績賞 -02

電動車搭載インバータ用パワー半導体素子の一体・小型化

技術開発者 富士電機株式会社 半導体事業本部 電装事業部 電装モジュール部
担当部長 小林 英登
技術開発者 同社 同事業本部 開発統括部 プロセス開発部
薄ウェハ技術課 チームリーダー 爲則 啓
技術開発者 株式会社 デンソー セミコンダクタ事業部
パワーモジュール技術部 第2設計室 担当次長 三浦 昭二

開発業績の概要

1.開発の背景
 1997年に京都議定書が採択され、温室効果ガスの排出量を削減する国際的な取り組みが始まった。自動車には温室効果ガスであるCO2の排出量削減や燃費向上が要求され、HEV、PHEV、BEVに代表される電動車へのシフトが必要であった。電動車の普及には車載インバータや搭載されるパワー半導体素子の小型化・低コスト化が求められた。これら要求に応えるべく、従来素子の機能を1個の素子で実現できる車載RC-IGBT *1)の製品開発に挑戦した。
*1) Reverse Conducting Insulated Gate Bipolar Transistor

2.開発技術の概要
 従来の車載インバータ用パワー半導体素子は、IGBTとFWD *2)の2個の素子を接続して使用していた。これに対して、RC-IGBTは、同じ機能を1個の素子で実現できる。これまで、RC-IGBTは低電流・低耐圧素子の民生用としてはあったが、大電流・高耐圧素子で高破壊耐量や低損失特性が要求される車載用ではなく、世界で初めて車載RC-IGBTの製品化を実現し、車載インバータの小型化・低コスト化による電動車の拡大に大きく貢献している。
*2) Free Wheel Diode

3.開発技術の特徴と効果
 RC-IGBTは、電界を緩和する耐圧構造のガードリング領域を一体化することで面積を削減できる。更に、IGBT領域とFWD領域をストライプ状に交互配置することで、放熱を分担するため放熱特性が向上し、電流密度を上げることが出来る。このため、素子面積(IGBT+FWD)を従来と比較して、40%の小型化が可能となっている。


図1