1.開発の背景
少子高齢化の日本社会において、高齢化に伴う発作・急病等による体調異変などを要因とする事故が顕在化し、ドライバーの疾患・体調急変による重大事故は周囲も巻き込むことで社会問題になっている。死亡重症事故件数は年々減少しているが、ドライバーの運転中の体調急変による事故件数は年間300件に近づき増加を続けている。また、発作・急病などの体調急変は、その95.8%が速度60キロ以下(一般道)で発生している。
2.開発技術の概要
発作や疾患に伴う内因性事故の症例を分析した結果、脳機能の低下として症状が出る4疾患(てんかん、脳血管疾患、低血糖、心疾患)が事故の症例の約90%を占めることが分かった。これらに共通する症状である脳機能の低下を、人体の中の反応をモデル化することで、高い精度で推定できるようにした。それにより、一般道においても迅速に異常を自動検知し、それに基づいて車両を減速停止、緊急通報まで自動で行うことで、周囲の歩行者も事故に巻き込むことを減らし、ドライバーの救命にも繋げるブレークスルーを実現した。
3.開発技術の特徴と効果
(特徴)人の内部で起こる脳機能の低下に伴う変化のメカニズムに基づいて、クルマのシステムで体調変化を高精度に検知することを可能にした。脳機能の低下の生じ方は,急激に運転機能が低下するケースと、徐々に運転機能が低下するケースと大きく2つに分かれる。急激に運転機能が低下するケースにおいては、急激かつ全般的に脳機能が低下して意識消失に至る。そこで意識が消失して運転姿勢が崩れた状態、閉眼が継続した状態、ハンドルを操作できない状態を検知して総合的に異常を判定する。
(効果)国内の販売開始以来、お客様の装備選択率は95%を超えて、本システムがあるから購入するというお客様が増えている。ドライバー異常時対応システムの技術要件を定めた世界初の国内ガイドライン作成に貢献し、そのガイドラインをベースにした日本発の国際基準化にも貢献した。今後も、適用車種を増やし海外市場へも導入を進め、より安全・安心なクルマ社会に貢献していく。
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