1.開発の背景
軽商用車は商用車全体の保有台数の約60%を占め、中でも荷室長や積載時の走行性能に優れるFR(フロントエンジン リヤドライブ)レイアウトの車両が大半を占め、日本の産業を支える重要な存在になっている。
近年の働き手の多様化、使用用途の多様化、新たな燃費規制の適用といった軽商用車を取り巻く環境変化に対応すべく、ダイハツ工業株式会社(以下ダイハツ)はFRレイアウトの軽商用車に搭載可能な無段変速機「FR-CVT」を世界で初めて量産化し、軽商用車の性能を大幅に向上した。
2.開発技術の概要
軽商用車には、滑らかな走り・低燃費・広い荷室・多様な環境での走破性が求められている。しかし、従来の変速機ではこれら全てを実現することが困難であった。
そこで、FR-CVTでは3個のクラッチ(前進クラッチ・後進クラッチ・4WD切替クラッチ)を配置したダイハツ独自の構造(図1)を採用することで、この課題を解決した。
・前進クラッチに過大な負荷を逃がす機能を付与し、CVTの耐久信頼性を確保した。
・前進クラッチと後進クラッチを入力軸に対し両側に振り分け、CVTを小型化・低背化した。
・4WD切替クラッチを採用し、3モード(2WD・4WDロック・4WDオート)を切替可能とした。
3.開発技術の特徴と効果
2021年12月にFR-CVTをダイハツのハイゼットカーゴ、アトレー、ハイゼットトラックに搭載し、無段変速の滑らかな走り・クラストップレベルの燃費性能・クラス最大の荷室スペース・クラス初の3モード4WDによる多様な環境での走破性を実現し、商用車の性能向上・発展に寄与した。また、これらの性能向上を従来の変速機とほぼ同等の価格で実現し、低価格な車両をご提供可能とした。
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