市村産業賞

第55回 市村産業賞 貢献賞 -03

可変圧縮比機構付き自動車用ガソリンエンジンの開発

技術開発者 日産自動車株式会社 パワートレイン・EV技術開発本部 パワートレイン・EVプロジェクトマネージメント部
アライアンスPED兼部長 木賀 新一
技術開発者 同社 同本部 同部
パワートレイン主管 土屋 順久
技術開発者 同社 同本部 同部
パワートレイン主管 小島 周二

開発業績の概要

1.開発の背景
 エンジンの熱効率を向上させるため、理論的には圧縮比を上げなければならない。一方、高出力を出すためには空気を多く入れる必要があり、過給することが一般的であるが、ガソリンエンジンでは、圧縮比を上げるとノッキングという壁にぶつかる。従って、高出力化にはノッキングを抑制するために圧縮比を下げる必要があり、出力が不要な運転領域でも圧縮比が低い状態で運転するため、熱効率を高くできなかった。
 日産はこの相反する熱効率向上と高出力化の両立という内燃機関の根源的な課題を解決するため、20年以上前に可変圧縮比機構の研究を開始し、世界で初めて量産に成功した。

2.開発技術の概要
 可変圧縮比機構は、従来エンジンのコンロッドを3つのリンク(Uリンク、Lリンク、Cリンク)と電動モータ、それらを連結するコントロールシャフト及びAリンクに置き換え、このマルチリンクの姿勢を電動モータで制御することにより、圧縮比を14:1〜8:1に変換するものである(図1)。


図1


3.開発技術の特徴と効果
 可変圧縮比機構を搭載した「VCターボ」エンジンは、負荷及び回転に応じて圧縮比を変化させることが可能であり、定常運転などの低負荷時には圧縮比を14:1に上げて高効率運転を行う。
 ドライバーの要求で高負荷が必要になった場合は、圧縮比を最大8:1まで下げ、過給圧を上げて高出力を出すことが可能である。したがって、高効率高出力化を実現した。圧縮比の設定マップを図2に示す。


図2