市村産業賞

第56回 市村産業賞 功績賞 -03

低コスト・高精細ディスプレイに資する産業用インクジェット装置

技術開発者 パナソニックプロダクションエンジニアリング株式会社
生産設備事業センター PE技術部
部長 吉田 英博
技術開発者 同社 同センター 同技術部
主幹技師 中谷 修平
技術開発者 同社 同センター 同技術部
課長 臼井 幸也

開発業績の概要

1.開発の背景
 材料使用効率や省エネの観点からインクジェット技術は注目されていた。しかしながら、インク吐出の安定化、高粘度材料への適応、パネル面内の均一化などの課題があり、これらを解決し、高精細有機ELパネルやペロブスカイト太陽電池等へ適用することで幅広い産業への貢献を目指した。

2.開発技術の概要
 これらの課題を克服するため、以下に示すキーとなる技術を開発した。

(1) 独自のレーザ加工技術により、最適なノズル形状形成を行い、全てのノズル直上でのインク循環システム(図1)を構築し、メンテナンスフリーを実現した。
(2) 長尺ラインヘッドアライメント技術とすべての微小液滴ノズルの吐出制御技術の確立により、基板面内一括印刷と吐出体積および吐出位置の高精度化(図2)を実現した。

3.開発技術の特徴と効果
 これまでインクジェットでは困難とされていたインク循環によるメンテナンスフリー化とノズルからの微小体積を調整後、長尺ラインヘッドを用いた一括塗布技術により、有機ELパネルの均一膜形成を実現した。この工法で形成した有機ELパネルは輝度が高く、医療用途、ゲーム用途で市場から高い評価を得ている。今後は、本開発技術をペロブスカイト太陽電池やリチウムイオン電池などエネルギー分野への適用を進め、幅広く持続的に貢献していく。


図1


図2