1.開発の背景
重要な社会インフラである新幹線は、架空電車線(トロリ線)からパンタグラフを通して車両に電気を供給している。トロリ線とパンタグラフは常に接触する構造の為、トロリ線は摩耗しその進行程度によっては最悪断線する事態になりえる。そのような事態を避けるために、光ファイバを用いた警報機能付きトロリ線のシステム開発に着手した。
2.開発技術の概要
新幹線用のトロリ線断面積は170o2(直径15.5mm)の銅合金を使用しており、その摩耗限度位置に直径1.1mmΦの光ファイバを2本内蔵した構造である。トロリ線の光ファイバを内蔵させる検知溝孔は有効最大径を1.8mmΦにしており、1.5q以上の長手方向に均一に成型されている。独自に開発した製法で光ファイバを挿入しながら同時に溝をかしめており、その溝は均一でありクリアランス0.3mm以下で光ファイバを外部から保護できるようにしている。このトロリ線の実用化にあたっては、架線状態での光ファイバへの伸びひずみ量を設定閾値まで下げることが必須な課題であった。伸びひずみが高い状態では、光ファイバの寿命は短くなることで断芯に至りシステムとして機能しなくなる。その解決方法として負荷を軽減した光ファイバ挿入製法の開発や東海旅客鉄道(株)殿と共同で進めた特殊延線工法の開発により、光ファイバ伸びひずみ量を軽減させることに成功した。
3.開発技術の特徴と効果
トロリ線の摩耗検知機能を有した光ファイバの情報を独自開発した端末金具、光ケーブル、光内蔵碍子を介して地上の変電所内の中継装置に収集し新幹線の中央指令所において摩耗異常を確認することができる。これにより新幹線が走行する昼間でも監視可能であり、しかもピンポイントでの摩耗箇所が特定でき、現地に行かなくても中央指令所で摩耗の確認ができる画期的なシステムである。東海道新幹線路に2020年に導入を開始し、順次置き換える予定である。この技術開発導入により新幹線路の安全安定輸送に大きく貢献できる。また、よりメンテナンスフリー化が求められる昨今、最適なシステムであり新幹線路での適用拡大が期待される。
|