市村産業賞

第57回 市村産業賞 功績賞 -01

強度、熱伝導性及び絶縁性を高くした窒化ケイ素部品

技術開発者 東芝マテリアル株式会社 本社
電子用ファインセラミックス事業推進責任者
中山 憲隆
技術開発者 同社 事業開発部
主査 加藤 寛正
技術開発者 同社 構造用FC製造部
フェロー 酒井 亮
推  薦 一般社団法人 電気通信協会

開発業績の概要

1.開発の背景
 窒化ケイ素は、焼結しにくい、加工が難しいなど量産性に課題があり実用化が進まなかった。希土類助剤添加で常圧焼結により実用化し、量産プロセスを開発し、半導体用基板やベアリング用ボールなど環境に配慮した製品の部材として産業への貢献を進めた。

2.開発技術の概要
 ベアリングとしての耐摩耗を活かすために、ボールは加工を減らしニアネットシェイプでの焼結を可能にした。基板は、高強度に加えて高絶縁特性が必要であり微小欠陥(マイクロポア)を低減させた。さらに、粒界制御技術によりボール材の5倍の高熱伝導化を達成し、調合・成形・焼結・接合のプロセスで材料の均一性と量産性というトレードオフを両立した。

3.開発技術の特徴と効果
 高強度によりベアリングの耐摩耗性は金属の15倍以上になり絶縁性による電食対策と合わせて風力発電、宇宙・航空、工作機械用途が拡大した。プレーン基板と銅回路を形成した銅回路基板は、絶縁性と高熱伝導性を兼ね備えており、薄化・高接合強度により、EV/HEV用PCUやパワー半導体などが拡大した。窒化ケイ素部品を組み込んだ製品はメンテナンスフリーや燃費低減など脱炭素社会の実現に貢献している。

図1