市村産業賞

第57回 市村産業賞 貢献賞 -01

保守省力化を実現するモータコントロールセンタ搭載設備診断技術

技術開発者 三菱電機株式会社 受配電システム製作所 コントロールセンタ製造部
電子システム設計課
課長代理 宮内 俊彦
技術開発者 同社 先端技術総合研究所 電機システム技術部
電気機械診断・予知保全技術グループ
グループマネージャー 金丸 誠
技術開発者 同社 受配電システム製作所 コントロールセンタ製造部
電子システム設計課
技師 安原 裕登

開発業績の概要

1.開発の背景
 工場や産業プラントで使用されるモータは、ファン、ポンプ、圧縮機などの動力源であり国内で約1億台が稼働している。モータの故障停止は生産に大きな影響を与えるため日常的に保守作業員が1台ずつ五感点検をしている。しかし、数百から数千台規模の巡視点検が必要で点検労力が大きいこと、さらには人手不足により保守業務のノウハウなど技術伝承が困難になっている。これらの課題を解決するために、保守作業員のノウハウに依らずにモータ設備の突発的な故障停止を未然に防ぐ診断技術が強く求められている。

2.開発技術の概要
 C本開発技術は、運転中のモータ電気信号(電流と電圧)に独自の信号処理を施すことにより、5種類のモータ設備異常(①レヤショート、②回転子バー異常、③機械系異常、④ベルト断線、⑤トルク異常)を検知可能である(図1、図2)。本技術をモータコントロールセンタに搭載することで、オンラインかつ自動で早期にモータ設備の異常を検知し、保守業務の省力化やプラントの安定操業に貢献した。

3.開発技術の特徴と効果
 モータ設備異常発生時の物理メカニズムに着目することで、人の目では判断がつきにくい微小な電気信号の変化を捉えることが可能である。従来のモータコントロールセンタと構造は同じで、信号処理のプログラムのみを変更することで本機能を実現した。独自の電気信号解析により、モータ設備異常の検知カバー率が34%から87%に向上した。これにより、モータ設備の突発故障停止の回避や、五感点検に頼っていた点検保守業務の省力化を実現した。

図1 図1