1.開発の背景
世界的に脱炭素社会の実現に向けた動きが加速する中、CO2排出の多くを占める商用車は、EVの開発・提供を進めるも、航続距離、車両重量、車両価格などの課題から普及には時間を要する。そのため、現在主流の動力方式である内燃機関において、従来以上に省燃費でエネルギーロスの少ないパワートレインを搭載した製品の開発、市場提供が求められている。また、物流業界ではeコマース普及による物流量増加に伴う深刻なドライバ不足に直面しており、さらに時間外労働の上限規制(2024年問題)によりリソースが減少し、輸送能力の低下が課題となっている。
2.開発技術の概要
いすゞ自動車株式会社では、商用車の環境性能とイージードライブ性能をより高いレベルで両立する、小型商用車用9速トランスミッション(図1)を開発した。独自のギヤトレイン構造(図2)を採用することで、一般的な6速トランスミッションと同じ歯車列数で9速を実現。多段化しつつ、従来の6速トランスミッションに比べて全長を17mm短縮し、8kgの軽量化を達成した。
3.開発技術の特徴と効果
9速に多段化し、ワイドレンジ・クロスレシオ化によりエンジン回転を抑えた省燃費走行が可能となり、騒音低減にも寄与した。また、デュアルクラッチとクロスレシオとの組み合わせにより、トルク抜けなく適切な駆動力が得られ、従来の小型トラックにはない運転のしやすさを実現した。2023年3月にフルモデルチェンジした小型商用車ELFに本トランスミッションを搭載し、CO2排出量を削減するとともに、イージードライブ性能向上によりドライバの疲労を軽減、労働環境変化によりドライバ不足の解消にも貢献した。
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